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iPS細胞での治療に一歩 米チーム、マウスの貧血改善

2007年12月07日09時24分

 体細胞から作った万能細胞(iPS細胞)と遺伝子組み換え技術を使って、マウスの貧血の症状を改善することにマサチューセッツ工科大学などの米国チームが成功した。7日、米科学誌サイエンス(電子版)に発表する。山中伸弥・京都大教授らが作製手法を開発したiPS細胞を、実際に病気の治療に利用する道筋を示した成果だ。

 チームは、遺伝性の重い貧血を起こす鎌状赤血球症のモデルマウスの尾から細胞を取り、四つの遺伝子を導入してiPS細胞を作った。この細胞の遺伝子のうち、病気に関連する部分を正常なものに組み換え、体外で造血幹細胞に分化させてマウスの体に戻した。その結果、赤血球の形やヘモグロビン濃度、呼吸数などさまざまな項目で症状の改善が確認された。

 今回、iPS細胞を作るのに使われた遺伝子には、がん関連遺伝子が含まれる。チームは発がんのリスクを下げるため、遺伝子の運び屋であるウイルスを、京大が使っていなかったものも含め、複数使い分けるなどの工夫を加えた。

 すでに京大などが、がん関連遺伝子を使わないiPS細胞作製法を発表しているが、今回は新たな作製法を示した点からも注目される。

 症状の改善に至った詳しい仕組みの解明はこれからで、チームは「より安全な手法を探るとともに、がん化の有無など長期的にみていく必要がある」としている。

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