医療ミスを起こした医師らの処分を求める厚生労働省への申し立てに対し、06年度以降、1件も医師法に基づく処分が行われていないことが6日、分かった。医療事故を繰り返す「リピーター医師」対策などのため、厚労省は行政処分強化を打ち出したが、患者らの訴えが事実上、たなざらしになっている実態が浮かび上がった。
厚労省は02年12月、刑事事件で有罪が確定したケースだけでなく、民事裁判で過失が認められたケースについても処分対象とする方針を決めた。その後、医師らの処分を求める申し立てを受け付けるようになり、今年10月時点で計109件寄せられている。
厚労省は、▽医師法に強制調査の権限を明記▽医師資格を持った専門職員を全国の地方厚生局(7局1支局)に配置▽免許取り消しと医業停止の二つしかなかった行政処分に、新たに「戒告」を追加--などで、問題のある医師の処分を積極的に進めるとしていたが、昨年3月を最後に申し立てから処分に至った例はなく、地方局への専門職員配置も実現していない。
一方、刑事事件を起こした医師などに対しては今年9月、過去最多の77人を処分した。患者が申し立てた案件との違いが際立っており、市民団体「リピーター医師をなくす会」(三重県四日市市)の伊藤永真代表は「強制調査の権限ができても処分がなく、厚労省にやる気があるのか疑わしい」と指摘する。
同省医師資質向上対策室は「結果として処分件数が増えていないのは事実だが、調査内容については答えられない。専門職員未配置は人材確保が難しいため」としている。【飯田和樹】
毎日新聞 2007年12月7日 2時30分