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2007年12月7日

◎七尾市が談合防止策 他市町も見て見ぬふりできぬ

 能登半島地震の復旧工事をめぐる談合事件を受け、七尾市が一般競争入札拡大や地域要 件の見直し、予定価格の事前公表など再発防止策を矢継ぎ早に打ち出したのは当然である。自治体は談合が表沙汰になって、ようやく重い腰を上げるきらいがあるが、今回のような事件は氷山の一角とみられ、他の市町も見て見ぬふりはできないはずである。

 「談合はあってはならない」と一般論を繰り返すだけでは、地域に深く根を張った悪し き体質を一掃することはとうてい無理である。大事なのは、談合は絶対に許さないという発注者側の毅然とした姿勢であり、具体的な仕組みづくりを通して、そうした強い意思を示していくことである。入札改革については自治体間で温度差が生じているが、談合が発覚して後手に回る前に、今回の事件を教訓にそれぞれ実効性ある防止策を講じてほしい。

 七尾市は一般競争入札の対象を現行の三千万円以上から五百万円以上に拡大した。今年 四月に二億円以上から三千万円以上に改めたばかりだが、五百万円以上は石川県内の自治体では最も低い額である。指名競争から一般競争入札への移行は、実績を見極めたいとして段階的に実施する自治体が多い中、思い切って下げるのも行政からの強いメッセージとなる。

 七尾市が決めた予定価格の事前公表については、落札率が高止まりしやすいとの指摘も あるが、発注者側の関与を防止するには一定の効果がある。一般競争入札の拡大を基本に、さまざまな制度を組み合わせて競争性、透明性を高めていくのが望ましいだろう。

 入札制度は行政のコスト削減ととともに、業者に効率的な経営を促す狙いがある。談合 がやりやすいような仕組みをいつまでも放置していては、自治体工事に過度に依存する体質も変わっていかない。長い目でみれば、行政の役割は競争を通じて足腰の強い業者を育てていくことではなかろうか。

 談合が犯罪である以上、それを防止するのが工事を発注する側の責任である。身近なと ころで事件が摘発されれば、他の自治体も機敏に反応し、入札改革の歩みを加速させるような真剣さが求められている。

◎OPEC増産見送り 原油高の“犯人”を教えた

 増産に踏み切るかどうかが注目されていた石油輸出国機構(OPEC)の総会で増産が 見送りと決まったが、この決定に少なからぬ影響を与えたものとしてイランをめぐる有事への懸念の後退が挙げられている。

 米国が今にもイランの核開発施設を攻撃しそうだとの情報が世界を駆けめぐって原油価 格をも押し上げていたとされる。その情報に冷水を浴びせたのがイランは国際世論の圧力で二〇〇三年から核兵器開発を中断しているとした米国の国家情報評価(NIE)の公表だった。

 NIEというのは、中央情報局(CIA)など米国の十六の情報機関の分析や評価をま とめた機密文書で、政策決定の判断材料として国家情報官に報告される。米国で最も権威があるとされる報告書である。

 公表されたものはイランの核開発に関する評価の修正だった。その修正にOPECがい ち早く反応して増産の見送りを決定し、期せずして原油高の“犯人”を教えてくれたということができる。

 原油価格は基本的には需要と供給で決まるはずなのだが、このところ異変が起きていた 。平たくいえば、経済発展が著しい中国やインドなどの需要が伸びるとの見込みや、それを見込んだヘッジファンドなど投機筋の参入に加え、イラン情勢の行方をめぐる緊張が折り重なって市況が不透明さを増し、結果として価格が押し上げられてきたのである。

 イランへの攻撃が開始されれば、原油価格がさらに20―50%も上がると予想されて いた。が、これまでよりトーンダウンしたNIEの公表によって有事への懸念がいっぺんに低下したのだった。

 そのような重要な働きをしたNIEが公表されたのは、米政府内部に穏健派が復活し、 実権を持ち始めたからだといわれる。穏健派とは、すなわちライス国務長官や、六カ国協議の米首席代表として活躍しているヒル国務次官補らである。

 古くは日本の頭越しにニクソン大統領の補佐官だったキッシンジャー氏が訪中して局面 を打開したように、米国の対外政策では、日本人の目からすると矛盾にみえることがしばしば起こり得るということを思い出したいものである。


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