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特集・コラム [ 話題の金融商品 ]
ロシアはずいぶん石油への依存度が高いようですね
- ロシアの特徴は「職種が少ない」ということです。ロシアの産業連関表(※注1)を見れば明らかですが、ロシア経済のほとんどは石油関連の業種によって支えられています。自動車や衣料、食品といった業種はなく、水産業も活発ですが、石油以外で国際競争力のある企業がないのがロシア経済の実態です。原油が下落すれば、1990年代のサウジアラビアと同じように低迷期に入る可能性もあるでしょう。
- ロシア文化の歴史はロマノフ王朝の頃にさかのぼると思いますが、トルストイの文学を読めば分かる通り、王侯貴族の時代には何でも王様が面倒を見てくれました。だから、そもそもロシアでは自分で業を興し、工夫して売買しようという文化がないのです。
- 1917年のロシア革命で王朝が滅んだら、今度はマルクス・レーニン主義となってしまった。産業革命や市民革命を経ることなく、王様の時代の後はいきなり共産主義の世界ですから、誰も働きませんよ(笑)。
- ※注1 産業連関表=ある国・地域の産業ごとの経済取引を一覧表にまとめたもの。1936年にソ連出身の米経済学者レオンチェフ博士が考案し、彼はその功績で1973年にノーベル経済学賞を受賞した。各産業間の密接な取引関係の中で、ある産業の需要の増減は、その産業の需要の増減にとどまらず、各関連産業に直接・間接的な影響を与える。各産業の生産活動は、各産業で働く従業者の賃金、ひいては消費者の需要にも影響を及ぼすため、産業全体の結びつきを知ることが経済分析で役に立つ。
軍事技術の民生化も進まなかったのですか?
- ロケットを飛ばす技術があれば、国際的な競争力を持った産業もできると思いがちですが、ロシアは独特です。日本人宇宙飛行士の若田光一さんがロシアのソユーズ宇宙船に乗った時、ロシアの宇宙服が「手縫い」だったことに驚いたそうです(笑)。米航空宇宙局(NASA)なら当然、工場で高品質のものを安定して作りますよ。
- 自動車は外資が進出して発展が期待されていますが、逆を言えば、ロシア国民がトヨタやフィアットの自動車を買えるようになれば、国産メーカーに乗りたいと思う人はいなくなるでしょう。衣料品や食品といった基本的な分野の産業が育たなければ、内需も発展しません。
- ロシアの国際競争力を示す隠れた輸出品に、軍用の自動拳銃「トカレフ」、ライフル銃「カラシニコフ」があります。これらの銃は命中精度が悪いのですが、とにかく安いから競争力があるんです(笑)。世界中のゲリラやマフィアといったアングラ勢力に広まり、テロとの関連で国際問題にもなっています。トカレフは日本では40万円くらいで売られているようで、暴力団の発砲事件でもよく登場します。モスクワ市内なら実売5万円くらいで手に入るのではないでしょうか?
- 今は安さだけが取り柄ですが、カラシニコフは部品点数が約12個と非常に少ないのです。旧日本軍の一〇〇式機関短銃は約340個でしたから、構造がシンプルな分、メンテナンスもしやすく故障しにくい長所があります。第二次世界大戦のレニングラード包囲線でソ連がドイツ軍を破った一因として、ロシア製兵器が極寒の中でも動いたからと言われています。ある意味、当時としては最高の技術が使われていたのでしょう。
- しかし過去に優れた製品を作っても、それを改良して付加価値をつけるといったマーケティングの発想は今のロシアにも全くありません。石油や水産業も単に「取ることができる」だけですから、効率性・生産性は低いです。欧米の資源・穀物メジャーに本当に勝てる力があるか微妙ですね。
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