「やる気出ない」 今も続く、保健室通い 福岡・三輪中のいじめ自殺 【西部】
いじめを受けたと訴えて自殺した中学2年の男子生徒(13)が通っていた福岡県筑前町の三輪中学校で、在校生が保健室に集まる現象が続いている。やる気が起きない、自殺のことが頭から離れない――。県教委はスクールカウンセラーを増やして心のケアに取り組むが、深い影が広がったままだ。(田中久稔)
11日の生徒の自殺から約1週間後、同学年の男子生徒が自宅でつぶやいた。「おれね、保健室行っとっちゃよ」。母親は耳を疑った。部活の練習で早朝に出るのを見て、学校が楽しくてたまらないんだと思っていた。
わけを聞く母親に生徒は答えた。「やる気出ないっちゃもん」。丸一日、保健室で寝ていた日もあったと聞き母親は養護教諭に会いに行った。自宅で見せない物憂げな様子でいることがあると知った。
「保健室行ってきます」「おう」。関係者によると、生徒と教諭の間で、そんなやり取りが繰り返されているという。保健室に長居する生徒がいても、教諭は無理に教室に連れ戻さない。
同校は生徒数425人。別の母親が学校側から聞いた説明では、延べ150人が保健室を訪れる日もあった。次第に減っているが、今も生徒の姿は消えない。
学校から保護者への説明は20日から途絶えた。ある父親は最近、2年生の娘に保健室の様子を聞いた。「いつも20、30人おる」。中に入りきれず、他にも部屋が用意されているという。
もともと三輪中には週1回4時間、カウンセラーの臨床心理士が訪れていた。生徒の自殺後、福岡県教委は在校生の動揺に対応するため、16日からの5日間で連日2〜5人、延べ17人のカウンセラーを派遣。生徒や教諭、保護者の相談に乗り、リラックス法を教える。今も毎日1人が待機している。
県教委によると、自殺のあと、通常の2倍の20人以上が欠席した。一時は10人台に減ったが、24日は20人を超えた。県北筑後教育事務所(久留米市)は「生徒のクラスメートや仲の良かった在校生のケアは長引くかもしれない」と話す。
教室に残された生徒の机には、追悼の花が置かれている。幼なじみの同級生の一人は生徒の自殺後10日がたっても、保健室通いを続けた。「教室におると花が目に入ってくる。思い出すっちゃ」
別の2年生の女子生徒は何も家族に語らない。母親もあえて聞かない。「カウンセリングで子どもの心の奥まで入り込めるのかどうか……。不安です」。長い目で見守らなければと思っている。
朝日新聞 10/29 夕刊
いじめを受けたと訴えて自殺した中学2年の男子生徒(13)が通っていた福岡県筑前町の三輪中学校で、在校生が保健室に集まる現象が続いている。やる気が起きない、自殺のことが頭から離れない――。県教委はスクールカウンセラーを増やして心のケアに取り組むが、深い影が広がったままだ。(田中久稔)
11日の生徒の自殺から約1週間後、同学年の男子生徒が自宅でつぶやいた。「おれね、保健室行っとっちゃよ」。母親は耳を疑った。部活の練習で早朝に出るのを見て、学校が楽しくてたまらないんだと思っていた。
わけを聞く母親に生徒は答えた。「やる気出ないっちゃもん」。丸一日、保健室で寝ていた日もあったと聞き母親は養護教諭に会いに行った。自宅で見せない物憂げな様子でいることがあると知った。
「保健室行ってきます」「おう」。関係者によると、生徒と教諭の間で、そんなやり取りが繰り返されているという。保健室に長居する生徒がいても、教諭は無理に教室に連れ戻さない。
同校は生徒数425人。別の母親が学校側から聞いた説明では、延べ150人が保健室を訪れる日もあった。次第に減っているが、今も生徒の姿は消えない。
学校から保護者への説明は20日から途絶えた。ある父親は最近、2年生の娘に保健室の様子を聞いた。「いつも20、30人おる」。中に入りきれず、他にも部屋が用意されているという。
もともと三輪中には週1回4時間、カウンセラーの臨床心理士が訪れていた。生徒の自殺後、福岡県教委は在校生の動揺に対応するため、16日からの5日間で連日2〜5人、延べ17人のカウンセラーを派遣。生徒や教諭、保護者の相談に乗り、リラックス法を教える。今も毎日1人が待機している。
県教委によると、自殺のあと、通常の2倍の20人以上が欠席した。一時は10人台に減ったが、24日は20人を超えた。県北筑後教育事務所(久留米市)は「生徒のクラスメートや仲の良かった在校生のケアは長引くかもしれない」と話す。
教室に残された生徒の机には、追悼の花が置かれている。幼なじみの同級生の一人は生徒の自殺後10日がたっても、保健室通いを続けた。「教室におると花が目に入ってくる。思い出すっちゃ」
別の2年生の女子生徒は何も家族に語らない。母親もあえて聞かない。「カウンセリングで子どもの心の奥まで入り込めるのかどうか……。不安です」。長い目で見守らなければと思っている。
朝日新聞 10/29 夕刊