福岡・筑前 三輪中いじめ自殺事件

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福岡・筑前町の中2自殺:首のロープほどき「命だけは」−−両親の思い(毎日新聞)

福岡・筑前町の中2自殺:首のロープほどき「命だけは」−−両親の思い

 ◇絶やさなかった笑顔。その裏にどんな悩みが……

 福岡県筑前町立三輪中学校2年の男子生徒(13)がいじめを苦に自殺した問題で、両親がつらい思いを語った。【船木敬太】

 父親の影響を受け、小学1年生からバレーボールを始めた。後に弟2人も通い始め「バレーを通じて家族がひとつになるのが楽しみでした」。欲しい物があっても「僕はいいから、弟たちに先に買ってあげて」と話す弟思いの兄だった。

 11日午後。勤務先から戻った母(36)は叫ぶ祖父の声を聞いた。「首をつっている!」。首に絡まったロープを外し、横たえて救急車を待った。「しゃべらなくても人工呼吸器をつけてもいい。命だけは持ち続けてほしい」と懸命に願った。

 その日の朝は、いつものように家族で食卓を囲んだ。息子も「おいしいね」と朝食を食べていた。「お母さん、行ってくるよー」。玄関先から元気な声が聞こえ、「頑張って行ってらっしゃい」と声をかけた。食器を洗っていて姿は見なかった。それが最後だった。

 家族に、いじめについて一言もしゃべらなかった。夏休みには同級生らと家を行き来し、自宅では家族一緒にトランプで遊んだ。絶やさない笑顔の裏にどんな悩みを抱えていたのか。「いろんなことを、もっと聞いておけばよかった」。気づいていれば、絶対学校に行かなくていいと言った。後悔の思いがあふれる。

 生徒は「生まれ変わったらディープインパクトの子になりたい」と遺書に書いた。両親は「強い子になりたい。つらくて、もう人間には生まれ変わりたくなかったんでしょうか」。

 家族全員でいるのが当たり前だと思っていた日常は失われてしまった。「そこにいるだけで幸せだった」。亡くなった実感はわかない。「何してるのかな、ご飯は食べているのかな。ちゃんと寝ているのかな。楽しくやってるのかな」。我が子を思い続けている。

毎日新聞 2006年10月23日 東京朝刊

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