別の教諭、他にいじめか 全校調査で指摘 福岡・三輪中で自殺生徒の母明かす【西部】
福岡県筑前町の三輪中学校2年の男子生徒(13)がいじめを受けたという遺書を残して自殺したあと、学校が全校生徒を対象に実施したアンケートの中に、いじめの発端とされる1年の時の担任教諭とは別の教諭も、校内で他の生徒にいじめや暴力行為をしていたという指摘があったことが19日、わかった。同日の文部科学省の緊急会議では福岡県教委などが報告を行ったが、これを含め新たな事実は明らかにされなかった。文科省はこの会議でいじめに関する指導体制の総点検を求め、「いじめを隠すな」と訴えた。
アンケートは、生徒の自殺以後、三輪中学校が実施した。このうち、16日朝に行った2回目について、学校側から説明を受けた生徒の母親が報道陣に、その内容の一部を明らかにした。母親は、「(アンケートには)ほかの先生の名前も挙がっていた。誰先生とは書いていないが、『いじめを自分も受けていた』とか。暴力もあったみたいですね」と話し、別の教諭からいじめを受けたという生徒の訴えがあったことを明らかにした。
アンケートには、3年生を中心に「だれを信じてよいのかわからない」という不信感や、「先生はきちんと悪いことを出して下さい」「遺族に謝罪して新しい三輪中をやり直しましょう」「うそをつかないでほしい」といった要望も記されていたという。
一方、福岡県教委は、文科省が19日、都道府県・政令指定市教委の生徒指導担当者らを集めて開いた緊急会議で、生徒の自殺について報告した。
県教委や町教委の報告をもとに文科省がまとめた資料では、(1)ほかの生徒から、相手にされない、ズボンを下げられそうになるといったいじめがあった(2)1年時の担任は、この生徒を「偽善者にもなれない偽善者」と呼び、生徒たちを「あまおう」「とよのか」「ジャム」「出荷もできないいちご」にランクづけするなど不適切な言動をしていた、と指摘した。
しかし、この元担任の言動と自殺との関係については「他の生徒によるいじめを誘発したこと、自殺につながったことについては(筑前町教委が)現在調査中」と述べるにとどめた。
また2回目のアンケートに、ほかの教諭によるいじめが記されていたことには触れていない。
学校側と町教委は19日夜、遺族宅を訪れ、文科省の資料を手渡し、詳しい説明をしないまま帰った。このあと父親は報道陣に対し、こうした対応では事実の解明が不十分なままに終わるのではないかと強い懸念を示し、「不満でいっぱいです」と述べた。
○文科省「事実を隠すな」 点検項目を見直し 緊急会議で教委に指示
文科省は19日の緊急会議で、いじめに関する指導体制の総点検を求めた。今回の自殺に伴い、学校や教委が総点検をする際のチェック項目を11年ぶりに見直した。これまで学校では26項目、教委では18項目あったが、新たに守るべきこととして「いじめの事実を隠すな」という点を初めて明記して加えた。
福岡県が文科省に報告した05年度の児童生徒千人あたりのいじめ件数は全国で2番目に少ない。同県は、いじめの実態把握のあり方を見直す方針だ。
県義務教育課の家宇治正幸・主幹指導主事は会議で、「市町村から件数だけを聞くのではなく、中身や事実を精査する作業が必要だ」と話した。「調査のあり方、学校の意識の問題があったのではないか。件数が減ることは望ましいが、それだけを注視していると実態が見えない」
愛知県は05年度のいじめ件数が全国トップ。松永裕和・義務教育課長は会議後、「統計上のいじめ件数はあくまで発見件数だということを、文科省側が明確にしたのは大きい」と話した。
大分県教委の佐藤晃洋・生徒指導推進室主幹は「いじめはすべての学校で起こりうる。常に危機感を持たなければ」。来週から始める県内の小中学校長を集めた会議で再点検を進めるという。
会議では具体的ないじめ対策の実例も示された。佐賀県は教師向けに、いじめ問題への指導が十分かどうかを見極めるチェックリストを配った。「相談しやすい環境づくりを心がけているか」「関係機関との連携をはかっているか」などを検証する内容だ。
○3回目調査「実施疑念」 生徒の父
教諭による生徒へのいじめの実態を調べるため、三輪中学の合谷智校長が実施する考えを示していた3回目の全校生徒へのアンケートが、実施されていない疑いが強いことが19日、わかった。
元担任によるいじめが発覚した後の16日朝、同校は「先生に考えてもらいたいこと」などを聞くアンケートを実施した。しかし、これではいじめの実態がわからない可能性があり、合谷校長は16日の記者会見で「(2回目の)アンケートは具体性に欠け、設問の仕方が悪い」と指摘。「もっと具体性が出る記述で今日の放課後、させていると思う」と話した。
しかし、生徒の父親は19日夜、「まだやっていないようだ」と不満を示した。文科省の資料に記されたアンケート回数も2回。県教委は同夜、「3回目をやったという報告は受けていない」と語った。
合谷校長は朝日新聞記者が事実をただしたのに対し、職員を介して「ノーコメント」と回答した。
朝日新聞 10/20
福岡県筑前町の三輪中学校2年の男子生徒(13)がいじめを受けたという遺書を残して自殺したあと、学校が全校生徒を対象に実施したアンケートの中に、いじめの発端とされる1年の時の担任教諭とは別の教諭も、校内で他の生徒にいじめや暴力行為をしていたという指摘があったことが19日、わかった。同日の文部科学省の緊急会議では福岡県教委などが報告を行ったが、これを含め新たな事実は明らかにされなかった。文科省はこの会議でいじめに関する指導体制の総点検を求め、「いじめを隠すな」と訴えた。
アンケートは、生徒の自殺以後、三輪中学校が実施した。このうち、16日朝に行った2回目について、学校側から説明を受けた生徒の母親が報道陣に、その内容の一部を明らかにした。母親は、「(アンケートには)ほかの先生の名前も挙がっていた。誰先生とは書いていないが、『いじめを自分も受けていた』とか。暴力もあったみたいですね」と話し、別の教諭からいじめを受けたという生徒の訴えがあったことを明らかにした。
アンケートには、3年生を中心に「だれを信じてよいのかわからない」という不信感や、「先生はきちんと悪いことを出して下さい」「遺族に謝罪して新しい三輪中をやり直しましょう」「うそをつかないでほしい」といった要望も記されていたという。
一方、福岡県教委は、文科省が19日、都道府県・政令指定市教委の生徒指導担当者らを集めて開いた緊急会議で、生徒の自殺について報告した。
県教委や町教委の報告をもとに文科省がまとめた資料では、(1)ほかの生徒から、相手にされない、ズボンを下げられそうになるといったいじめがあった(2)1年時の担任は、この生徒を「偽善者にもなれない偽善者」と呼び、生徒たちを「あまおう」「とよのか」「ジャム」「出荷もできないいちご」にランクづけするなど不適切な言動をしていた、と指摘した。
しかし、この元担任の言動と自殺との関係については「他の生徒によるいじめを誘発したこと、自殺につながったことについては(筑前町教委が)現在調査中」と述べるにとどめた。
また2回目のアンケートに、ほかの教諭によるいじめが記されていたことには触れていない。
学校側と町教委は19日夜、遺族宅を訪れ、文科省の資料を手渡し、詳しい説明をしないまま帰った。このあと父親は報道陣に対し、こうした対応では事実の解明が不十分なままに終わるのではないかと強い懸念を示し、「不満でいっぱいです」と述べた。
○文科省「事実を隠すな」 点検項目を見直し 緊急会議で教委に指示
文科省は19日の緊急会議で、いじめに関する指導体制の総点検を求めた。今回の自殺に伴い、学校や教委が総点検をする際のチェック項目を11年ぶりに見直した。これまで学校では26項目、教委では18項目あったが、新たに守るべきこととして「いじめの事実を隠すな」という点を初めて明記して加えた。
福岡県が文科省に報告した05年度の児童生徒千人あたりのいじめ件数は全国で2番目に少ない。同県は、いじめの実態把握のあり方を見直す方針だ。
県義務教育課の家宇治正幸・主幹指導主事は会議で、「市町村から件数だけを聞くのではなく、中身や事実を精査する作業が必要だ」と話した。「調査のあり方、学校の意識の問題があったのではないか。件数が減ることは望ましいが、それだけを注視していると実態が見えない」
愛知県は05年度のいじめ件数が全国トップ。松永裕和・義務教育課長は会議後、「統計上のいじめ件数はあくまで発見件数だということを、文科省側が明確にしたのは大きい」と話した。
大分県教委の佐藤晃洋・生徒指導推進室主幹は「いじめはすべての学校で起こりうる。常に危機感を持たなければ」。来週から始める県内の小中学校長を集めた会議で再点検を進めるという。
会議では具体的ないじめ対策の実例も示された。佐賀県は教師向けに、いじめ問題への指導が十分かどうかを見極めるチェックリストを配った。「相談しやすい環境づくりを心がけているか」「関係機関との連携をはかっているか」などを検証する内容だ。
○3回目調査「実施疑念」 生徒の父
教諭による生徒へのいじめの実態を調べるため、三輪中学の合谷智校長が実施する考えを示していた3回目の全校生徒へのアンケートが、実施されていない疑いが強いことが19日、わかった。
元担任によるいじめが発覚した後の16日朝、同校は「先生に考えてもらいたいこと」などを聞くアンケートを実施した。しかし、これではいじめの実態がわからない可能性があり、合谷校長は16日の記者会見で「(2回目の)アンケートは具体性に欠け、設問の仕方が悪い」と指摘。「もっと具体性が出る記述で今日の放課後、させていると思う」と話した。
しかし、生徒の父親は19日夜、「まだやっていないようだ」と不満を示した。文科省の資料に記されたアンケート回数も2回。県教委は同夜、「3回目をやったという報告は受けていない」と語った。
合谷校長は朝日新聞記者が事実をただしたのに対し、職員を介して「ノーコメント」と回答した。
朝日新聞 10/20