児童生徒の「いじめ隠すな」 対策、実例発表も 文科省・教委が緊急会議
北海道と福岡県で起きた児童生徒のいじめ自殺を受け、文部科学省は19日、都道府県・政令指定市教委の生徒指導担当者らを集めた緊急会議で、いじめにかんする指導体制の総点検を求めた。「いじめの重大性の認識が薄れてきている」としたうえで、「いじめを隠すな」と繰り返し訴えた。
今回の自殺に伴い、文科省は、各学校や教委が総点検をする際のチェック項目を11年ぶりに改定した。このなかで、学校と教委が守るべきこととして「いじめの事実を隠すな」という点を初めて明記した。
会議では、文科省の児童生徒課長が、統計上の数字はいじめの発生件数ではなく「発見」件数であり、「多いのは決して恥ではない」と強調。きちんと把握して迅速に対処することが必要だ、と訴えた。
◇
94年に中学2年生、大河内清輝君(当時13)がいじめを訴える遺書を残して命を絶った愛知県。松永裕和・県教委義務教育課長は、会議を終えて、「統計上のいじめ件数は、あくまで発見件数だということを、文科省側が明確にしたのは大きい。月末に開く県内の生活指導担当者の会議などで趣旨を徹底していきたい」と話した。
大分県教委の佐藤晃洋・生徒指導推進室主幹は「いじめは、すべての学校で起こりうる。常に危機感を持たなければ」。会議を受け、来週から始める県内の小中学校長を集めた会議で、「再点検を進める」と話した。
86年に中野区で中学2年生(当時13)がいじめを苦に自殺した東京都。美谷島正義・都教委指導部指導主事は、福岡の事件で教員の言動がいじめの誘因となったことが報告されたことに関連し、「いじめは人権問題との意識徹底に努めてきたが、課題は残っている。『対岸の火事』ではなく、取り組みを一層充実させていきたい」。20日に開く区市教委や都立学校の担当者を集めた会議で、説明するという。
ほかに、緊急会議では、具体的ないじめ対策の実例も示された。高知県では、いじめなど問題行動を把握するため独自の調査項目を設定し、各学校に依頼して回収、集計結果を1カ月以内に学校現場に届けているという。
佐賀県は教師向けに、いじめ問題への指導が十分かどうかを見極めるチェックリストを配布。「相談しやすい環境づくりを心がけているか」「関係機関との連携をはかっているか」などを検証する内容だ。
■自殺あった2教委の発表は
◆体面気にし消極的、許されない
北海道滝川市で起きた小6女児いじめ事件では、市教委がいじめの事実や遺書の存在を把握していながら「自殺の原因がいじめとは断定できない」としたため、「隠蔽(いんぺい)だ」などと批判された。
緊急会議の中で、道教委の秋山雅行・学校安全・健康課長は「学校の体面を気にするあまり、学校外への対応に消極的なことは許されない」という通知を事件後、道内の市町村教委に送ったと報告した。会議後、「適切なタイミングで分かっていることを報告していくことが必要だ」と話した。
◆早期発見できず痛恨のきわみ
福岡県筑前町の中2男子のいじめ自殺事件。緊急会議に出席した、県教育庁の家宇治正幸・主幹指導主事は、いじめ事件の後に県教委がとった対応が書かれた報告書を読み上げた。時折、口ごもりながら「早急に発見できなかったことは痛恨の極み」と語った。
福岡県は、文科省に報告した05年度の児童生徒1千人あたりのいじめ件数が全国で2番目に少ない。同指導主事は会議後、実態把握のあり方を根本的に見直すと述べた。「市町村から件数だけを聞くのではなく、その中身や事実を精査する作業が必要だ。件数だけに注視していると実態が見えない」
【写真説明】
都道府県、指定市の生徒指導担当課長による緊急連絡会議が行われた=19日午後、東京都千代田区で、葛谷晋吾撮影
朝日新聞 10/20
北海道と福岡県で起きた児童生徒のいじめ自殺を受け、文部科学省は19日、都道府県・政令指定市教委の生徒指導担当者らを集めた緊急会議で、いじめにかんする指導体制の総点検を求めた。「いじめの重大性の認識が薄れてきている」としたうえで、「いじめを隠すな」と繰り返し訴えた。
今回の自殺に伴い、文科省は、各学校や教委が総点検をする際のチェック項目を11年ぶりに改定した。このなかで、学校と教委が守るべきこととして「いじめの事実を隠すな」という点を初めて明記した。
会議では、文科省の児童生徒課長が、統計上の数字はいじめの発生件数ではなく「発見」件数であり、「多いのは決して恥ではない」と強調。きちんと把握して迅速に対処することが必要だ、と訴えた。
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94年に中学2年生、大河内清輝君(当時13)がいじめを訴える遺書を残して命を絶った愛知県。松永裕和・県教委義務教育課長は、会議を終えて、「統計上のいじめ件数は、あくまで発見件数だということを、文科省側が明確にしたのは大きい。月末に開く県内の生活指導担当者の会議などで趣旨を徹底していきたい」と話した。
大分県教委の佐藤晃洋・生徒指導推進室主幹は「いじめは、すべての学校で起こりうる。常に危機感を持たなければ」。会議を受け、来週から始める県内の小中学校長を集めた会議で、「再点検を進める」と話した。
86年に中野区で中学2年生(当時13)がいじめを苦に自殺した東京都。美谷島正義・都教委指導部指導主事は、福岡の事件で教員の言動がいじめの誘因となったことが報告されたことに関連し、「いじめは人権問題との意識徹底に努めてきたが、課題は残っている。『対岸の火事』ではなく、取り組みを一層充実させていきたい」。20日に開く区市教委や都立学校の担当者を集めた会議で、説明するという。
ほかに、緊急会議では、具体的ないじめ対策の実例も示された。高知県では、いじめなど問題行動を把握するため独自の調査項目を設定し、各学校に依頼して回収、集計結果を1カ月以内に学校現場に届けているという。
佐賀県は教師向けに、いじめ問題への指導が十分かどうかを見極めるチェックリストを配布。「相談しやすい環境づくりを心がけているか」「関係機関との連携をはかっているか」などを検証する内容だ。
■自殺あった2教委の発表は
◆体面気にし消極的、許されない
北海道滝川市で起きた小6女児いじめ事件では、市教委がいじめの事実や遺書の存在を把握していながら「自殺の原因がいじめとは断定できない」としたため、「隠蔽(いんぺい)だ」などと批判された。
緊急会議の中で、道教委の秋山雅行・学校安全・健康課長は「学校の体面を気にするあまり、学校外への対応に消極的なことは許されない」という通知を事件後、道内の市町村教委に送ったと報告した。会議後、「適切なタイミングで分かっていることを報告していくことが必要だ」と話した。
◆早期発見できず痛恨のきわみ
福岡県筑前町の中2男子のいじめ自殺事件。緊急会議に出席した、県教育庁の家宇治正幸・主幹指導主事は、いじめ事件の後に県教委がとった対応が書かれた報告書を読み上げた。時折、口ごもりながら「早急に発見できなかったことは痛恨の極み」と語った。
福岡県は、文科省に報告した05年度の児童生徒1千人あたりのいじめ件数が全国で2番目に少ない。同指導主事は会議後、実態把握のあり方を根本的に見直すと述べた。「市町村から件数だけを聞くのではなく、その中身や事実を精査する作業が必要だ。件数だけに注視していると実態が見えない」
【写真説明】
都道府県、指定市の生徒指導担当課長による緊急連絡会議が行われた=19日午後、東京都千代田区で、葛谷晋吾撮影
朝日新聞 10/20