福岡・筑前 三輪中いじめ自殺事件

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文科省調査、揺らぐ信頼 小中学校いじめ「件数減少」「自殺ゼロ」(朝日新聞)

文科省調査、揺らぐ信頼 小中学校いじめ「件数減少」「自殺ゼロ」 【西部】

 いじめは年々減っている――。そんな文部科学省調査の信頼性が揺らいでいる。中学2年の生徒(13)が自殺した福岡県筑前町ではいじめがあったのに学校が報告せず、北海道滝川市は当初、小学生(当時12)の自殺の原因をいじめと認めなかったからだ。どうすれば実態を把握できるのか。失われた2人の命が、その難しさと、課題を浮かび上がらせている。

 18日、福岡県庁。筑前町の自殺について調査するため訪れた文科省の課長補佐らと、生徒の父親が向き合った。
 「(全国で)いじめによる自殺は7年連続ゼロとあるが、実際にはある」。父親の声に、文科省側は「調査システムに問題があれば改善しないといけない」と応じた。父親は、学校から文科省への報告の実態に疑念を示し、「ガラス張りの報告をできる態勢をつくってほしい」と続けた。
 文科省(旧文部省)がいじめの実態把握に乗り出したのは85年度。全国の小、中、高校でのいじめ件数は15万5066件に上ったが、調査上のいじめ件数は86年度に66%も急減、その後も減少傾向が続いた。
 だが、94年、愛知県の中学2年生がいじめを苦に自殺。文部省は調査対象の定義を変更し、子どもが「いじめられた」と訴えれば認定することに。その影響もあり、前年度の3倍近い5万6601件にはねあがったが、最近10年は再び減少傾向。いじめを主な理由とする自殺件数も99年度から05年度まで「0」が並ぶ。
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 この調査は、学校からの報告をもとに、各地の教育委員会を通じて集計される。しかし、「自己申告」では意味が薄いとの批判は根強い。
 自殺した生徒が通っていた三輪中学では、過去数年間で7、8件のいじめがあった。だが学校はすでに解決したなどとして町教委に「0件」と報告。これが文科省に上げられていた。合谷智校長は会見で「統計上、きちんとあげるべきだった」と反省の弁を述べた。
 滝川市の小学6年の女児は昨年9月に首をつった時、「キモイと言われてとてもつらくなりました」などと記した遺書を教卓に残していた。「修学旅行の部屋割りで、女児だけどのグループにも入れなかった」といった事実も明らかになった。
 だが、市教委は「担任が指導し解決した」「手紙(遺書)の内容は友人関係について好き嫌いを表現したもの」と説明。いじめと自殺の因果関係を認めず、伊吹文科相の批判や全国からの抗議電話を招いて、ようやく認識を改めた。
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 実態把握への課題は、学校や教育委員会の姿勢だけではない。いじめの場合、本人や周囲が報復を恐れるなどして表面化しにくく、助けの手も差し伸べにくいという特性がある。
 筑前町の生徒は「親が心配するから、自分でどうかするから、心配せんでいい」と、相談した友人に他言しないよう伝えた。滝川の女児の同級生は親類に苦しい胸のうちを話していた。「仲間に入れてあげたかった。でも、そうすると自分がいじめられるかもしれない。そう思うと、授業中もがたがた震えて勉強どころじゃなかった」

 ●再発防止へ報告徹底を
 東京成徳大・深谷昌志教授(教育社会学)の話 福岡県筑前町の事件では、教育委員会は内輪の責任追及を恐れていじめに向き合わなかったのではないか。二度と起こらないようにするため、可能な限り情報開示して、問題点を明らかにするのは当然だ。自殺は氷山の一角。その下で多くの子どもたちがいじめで苦しんでいる。

 【写真説明】
自殺した男子生徒の父親(中央手前)は、文部科学省職員(奥の3人)に調査結果の公表を訴えた=18日、福岡県庁で、長澤幹城撮影

朝日新聞 10/19

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