ニュース:生活 RSS feed
【主張】国際学力調査 読解力向上が喫緊の課題
57カ国・地域の15歳を対象にした経済協力開発機構(OECD)の国際学力調査(PISA)で、日本の学力低下がまた裏付けられた。特に読解力不足は深刻な課題だ。
3年ごとに行われるこの調査は、解答理由を記述式で答えさせる問題が多く、「ゆとり教育」で育てようとした考える力や知識を活用する力が試されている。
科学、数学、読解力のうち、前回は、数学が世界トップから陥落するなど、ゆとり教育の弊害が目に見える形で表れ、ゆとり見直しにかじを切るきっかけになった。
日本は高校1年生が対象で、今回は学校現場で学力向上の取り組みが始まるなかで行われた。しかし、前々回、前回からの日本の成績の推移は、科学(2→2→6位)、数学(1→6→10位)、読解力(8→14→15位)と、今回もまた順位を下げた。
なかでも読解力は韓国、フィンランドなど上位と大きな開きがある。
PISAの読解力の試験問題は、文章だけでなく、グラフや図表など資料から情報を読み取り、自分の考えや意見を述べる力を問うものだ。こうした力は、数学など他の教科にも欠かせず、低下傾向が憂慮される。
これまで日本の学校の国語の授業は、小説など文学作品の主人公の気持ちを読み取ることなどに時間が割かれがちで、教師の独り善がりの授業の弊害が指摘されてきた。
別の学力調査でも、感想を自由に書くことはできているものの、説明文を読んで要旨を相手に伝えるなど、条件に沿って書くことは苦手とする傾向がでている。結果を受け止め、国語力や読解力の向上を目指して指導の改善に取り組んでほしい。
韓国や台湾が上位に顔を出す一方、学力の高さを誇っていた日本は胸を張れなくなっている。にもかかわらず文科省は、数学、科学は上位グループだとし、危機感が薄い。OECDがこうした調査を実施するのも、学力が経済力や国力に反映されるからだ。
調査では、科学への興味・関心や楽しさを感じる生徒の割合が他国に比べて低いことも明らかになった。ゲームなどに囲まれ、子供たちの読書量や体験不足が懸念される。考える力を養う教育が真剣に検討されるべきだ。