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妊婦:健診ためらい、経済的不安で増加 国の対策、浸透せず

清算を済ませ、新生児を抱いて退院する母親ら=大阪府高槻市のなかにし産婦人科クリニックで
清算を済ませ、新生児を抱いて退院する母親ら=大阪府高槻市のなかにし産婦人科クリニックで

 ◇公費負担増

 妊娠・出産に伴う経済的な不安などで、医療機関への受診をためらい、かかりつけ医を持たない妊婦が増え、問題になっている。国は昨秋以降、出産育児一時金(35万円)が医療機関に直接支払われる制度を導入したり、定期健診の公費負担回数を増やすよう自治体に通知するなどの対策を打ち出しているが、浸透していない。現状を探った。【大道寺峰子】

 ◇出産時「立て替え」なし

 妊婦の未受診を防ぐためには、通常、出産までに計14~15回通うとされる定期健診費用をどう支援するかが重要だ。

 10月に出産した神戸市灘区の中崎ミカさん(24)は、神戸市では公費負担による健診が2回だったのに、里帰り出産した大阪府高槻市では10月から5回分が公費負担になったと知った。「自治体によってこんなに差があるなんて」と驚く。

 健診費用は1回約5000~1万5000円。厚生労働省は今年1月、公費負担について「5回程度に増やすことが望ましい」という見解を通知した。ところが、8月現在で調査したところ、全国平均で2・8回にとどまっている=表参照。

 また通知を受け、新年度以降回数を増やすよう検討中の自治体が59・0%だったが、未定、もしくは増やす予定がないという自治体も17・7%だった。

 日本産婦人科医会の塚原優己・副幹事長は「医療機関に相談してくれれば、妊婦の負担を減らすアドバイスもできる。とにかくまず受診を」と話す。

 「出産費用を準備しなくて済み、ほっとした。35万円をいったん自分たちで立て替えるかどうかで負担感は全然違う。でも、市の窓口などで手続きの説明はなかった。まだ知らない人も多いのでは」

 10月に長女を出産した大阪府高槻市の井澤和子さん(36)は話す。井澤さんは2年間の不妊治療を受けて、出産にかかわる家計の負担は大きかったという。

 井澤さんが利用したのは、出産育児一時金の「受取代理制度」。分娩(ぶんべん)・入院費用は、額がほぼ同じで健康保険からの同一時金でまかなうケースが一般的だ。しかし、従来は出産者はいったん医療機関で支払いを済ませ、後日、一時金を受け取る仕組みになっており、費用を準備する必要は変わらなかった。

 このため、昨秋、一時金が30万円から35万円に引き上げられた際、受取代理制度を導入。出産予定日の1カ月以内に手続きをすれば、一時金が直接、医療機関に支払われる。

 しかし、制度はあまり知られていない。日本産婦人科医会が今年5月にアンケートをしたところ、回答のあった1564施設のうち受取代理制度の利用は17・2%にとどまった。利用が多かったのは、沖縄(36・7%)、鹿児島(33・0%)、佐賀(30・0%)など。一方、少なかったのは東京(5・9%)、神奈川(7・9%)、大阪(8・0%)だった。

 背景には、受取代理制度で医療機関の事務作業が増えることがある。このため、都市部の大病院では利用できないケースがある。調査を担当した石渡産婦人科病院(水戸市)の石渡勇・同医会常務理事は「自治体はもっと積極的にPRしてほしい」と訴える。

 ◇「飛び込み出産」、急ピッチで増加

 かかりつけ医を持たず、健診を受けないまま出産間際に医療機関に駆け込む「飛び込み出産」について全国的な詳しいデータはない。神奈川県産科婦人科医会が県内の基幹病院について調べたところ、03年に20件だったが、05年は39件。今年は1~4月だけですでに35件あり、年間100件を超すペースで増加している。

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 ■妊婦健診の都道府県別公費負担回数(厚生労働省調べ、今年8月現在)

北海道   2.3

青森県   2.8

岩手県   2.6

宮城県   2.4

秋田県  10.0

山形県   2.2

福島県   5.8

茨城県   2.0

栃木県   4.0

群馬県   2.3

埼玉県   2.0

千葉県   2.1

東京都   2.1

神奈川県  2.2

新潟県   4.0

富山県   4.3

石川県   5.0

福井県   4.9

山梨県   5.0

長野県   2.7

岐阜県   3.2

静岡県   2.4

愛知県   4.2

三重県   2.0

滋賀県   3.7

京都府   2.2

大阪府   1.3

兵庫県   1.4

奈良県   1.6

和歌山県  2.0

鳥取県   2.5

島根県   3.5

岡山県   2.7

広島県   3.3

山口県   2.7

徳島県   2.3

香川県   3.9

愛媛県   2.0

高知県   2.7

福岡県   2.0

佐賀県   2.3

長崎県   2.5

熊本県   2.2

大分県   2.1

宮崎県   2.8

鹿児島県  2.3

沖縄県   2.3

計     2.8

毎日新聞 2007年12月5日 東京朝刊

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