徳島放送局

2007年12月5日 9時38分更新

徳島刑務所問題でNPO会見

徳島刑務所の工場で作業していた数十人の受刑者が刑務官に殴るなどの暴行を加えた問題で受刑者の支援をしている東京のNPO法人が暴行の原因について「刑務所の医務課長による受刑者に対する異常な診療行為が背景にある」などとして医務課長の更迭などを求める緊急アピールを発表しました。

徳島市にある徳島刑務所では今月16日、工場で紙細工やゴムの加工をしていた20人以上の受刑者が複数の刑務官に対して殴るけるなどの暴行を加え、5人の刑務官が1週間程度のけがをしました。この問題をめぐって手紙での相談に応じるなどして受刑者を支援している東京のNPO法人「監獄人権センター」の弁護士などが緊急の記者会見を開きました。
この中で今月22日に徳島刑務所で8人の受刑者と面会したという弁護士は、暴行があった工場で作業していた受刑者の1人が「刑務所の医務課長が受刑者に対して虐待を繰り返していたことを積極的に告発していた受刑者が、暴行があった前日に面会に行ったまま戻らなかったため、複数の受刑者が『刑務所はこの受刑者を他の受刑者から隔離した』と判断し刑務官への暴行に至った」と証言したことを明らかにしました。
さらにNPO法人の事務局長を務める海渡雄一弁護士は(かいど・ゆういち)平成16年9月以降医務課長から診療を受けてけがをしたなどと訴えている受刑者がおよそ100人いて、このうち▼肛門に指をねじこまれたなどと訴えているケースが31件、▼無理やり絶食や食事を減らすよう命じられたケースが26件、▼投薬を拒否されたり、中止されたケースが20件に上ることなどを明らかにしました。
このためNPO法人では▼医務課長の更迭や▼国会へのカルテなどの開示、それに▼刑務所内の医療施設で外部の医師が診察できるような体制の確保などを求める緊急アピールを発表しました。
また受刑者など10数人からの委任状を受けて、この医務課長や診療行為に関わった刑務官などを特別公務員暴行陵虐などの疑いで年内にも告訴、告発する方向で準備を進めていることを明らかにしました。
これに対し法務省矯正局は医務課長の医療行為について「患者である一部の受刑者から苦情の申し立てがあったため、施設の保安上刑務所内の状況を見極める必要があった」として先月15日から医務課長を受刑者への直接の診療行為には従事させていないということです。
またことし6月から7月にかけて行った徳島刑務所の医療行為に関する調査の結果を踏まえて、今年8月に▼肛門に指を入れての「直腸診療」を行う際には受刑者から書面で同意を得ることを徹底するとともに▼受刑者に診療に関する情報を提供するよう徳島刑務所に対し口頭で指導したということです。
また徳島刑務所の高橋広志総務部長は「騒動の原因については調査中なので回答できないが、これまでの調査で医務課長が受刑者に対して虐待や不当な医療行為をした事実はなかった。
監獄人権センターが緊急アピールを出したことや今後刑事告訴などを考えていることについてはコメントする立場にない」と話しています。