書籍「せんせぇに愛たい」発売中です♪
ブログではもう読めない期間限定テキスト他、
オリジナル特別編も収録してます。
登場人物紹介
BGM(PC限定)
。・。・゜★・。・。☆・゜・。・゜
「うう…わたし…
死んでしまいたいよ…」
滴り落ちる涙。
今まで何度も泣き崩れる静香を見てきたけど、
ここまで我を忘れた彼女は初めてだったと思う。
「死にたい…」
この一言に…
彼女の今の気持ちが…
彼女がどれだけ落ち込んでいるのか、
彼女がどれだけ後悔しているのか、
それらが痛いほど伝わってくるから…
「死にたい、とかそんなこと言うなよ…」
「だってだって…
わ、私は…」
「もういいって言ってんだろ?
ホントにもう…いいから…」
中途半端に伸ばしていた右腕。
ハンカチを握り締めたまま、
どうしていいのか分からないまま、
中途半端に空中で止めていた右腕。
目を真っ赤にした静香を見て、
もういたたまれなかった。
彼女のことを…
大切な彼女のことを
このまま放っておくことなんて
出来るはずがなかった。
気付いたときには…
腰をあげて、立ち上がって、
この右腕で静香のことを抱きしめていたわけであり…
「え?」
「ごめんな…
お前がそんなに苦しんでることなんて
全然思ってもいなかった…
ごめんな…」
「せ、せんせぇ…」
力いっぱい抱きしめていた。
俺の腕の中にすっぽり入る彼女を見て、
彼女はなんてちっちゃいんだろう…
改めて思わずにはいられなくてさ…
こんな小さな体で、
俺のことをいつも一所懸命に考えて、
いつも必死に想いをぶつけてくれて、
本当に俺のことを想ってくれていた。
今回のことだって、
最初勉強を始めたことだって、
成績をあげて俺を喜ばせようと思ったことだった。
なのに、俺というヤツは
いい歳してくだらない嫉妬で頭がいっぱになって、
ホント情けないっつうか…
ホントしょうもないっていうか…
もう少しで…
本当に一番大事なものを失うところだった…
「お、お母さん、来ちゃったら大変だよ?」
俺の腕の中の静香に言われて、
あー、そう言えば…
いつもならそろそろお茶を持ってきてくれる頃合かも…ね…
いくら交際を認められたからって、
勉強中に娘が男と抱き合ってたら、
さすがにヤバイってことも分かるんだけど…
「そうだな…
見られちゃったらやばいかもな…」
暢気なことを口にする馬鹿な俺…
「知らないよ?
お母さん、怒っちゃうよ?」
「そうだな…
そしたら困っちゃうな…」
本気で心配する静香を他所に、
今、俺は…
どうしても手を離すことが出来なくてさ…
それは…
今、彼女から手を離したら…
どっか遠くに行ってしまいそうな、
そんな気がしていたのかもしれない。
「ホントにせんせぇは…」
腕の中で俺の胸に顔をうずめていた彼女が、
ほんの少しだけ顔をあげる…
「ん?」
「いい歳して子供なんだから…」
腕の中の彼女が、
ちょっぴり笑っていたんだ…
頬にはまだ涙の後がくっきりと残ってはいたけど、
でもたしかに笑みを浮かべてくれてたんだ…
でも…
それは本当にほんの一瞬のことであって…
久々に見せてくれた笑みは、
あっという間にどこかに封印されてしまったわけであり…
そして…
抱きしめていた両腕も、
彼女の手によってゆっくり外されてしまい…
「静香…?」
さっき感じた『嫌な予感』が…
再び頭の中を過ぎったわけであり…
彼女は…
また元の険しい表情に戻っていて…
「せんせぇ…
私ね、別れようなんて…
そんな軽い気持ちで言ったわけじゃないよ?」
「………」
「私…
せんせぇのこと、好きだけど…
大好きで仕方ないけど…
今、このまませんせぇと一緒にいたら、
自分がダメになるような気がして…」
どうして…
嫌な予感に限って
こうも当るもんだよ…
冷静にそんなことを思う俺がいる。
多分、俺にも分かっていたんだと思う。
目の前の彼女はいつもの静香じゃないってことを―――
いつもの彼女なら…
ああやって抱きしめて、
ああやってお互いの温度を感じあえば、
それだけで分かり合えていた…はずだった…
でも…
俺の思惑は見事に外れてしまったわけであって…
「ごめん…
しばらく時間をあけてもらうってのはダメかな…?」
「それは…
別れたいって言ってるんだよな…」
「う~ん…
そういうつもりじゃないけど…
でも冷静に考える時間が欲しいと思ってる。
ダメ…かな…?」
「………」
「私、勝手すぎだよね…
もし、そんなのせんせぇが嫌だって言うんなら…」
言うなら…?
思わずゴクッと唾を飲み込んだ音が、
部屋中に響き渡ったような気がしたぐらい、
静寂に包み込まれた瞬間。
この異様な空間の中で、
ただただ静香の口元が動くのを見つめていました。
「せんせぇの好きにしてくれていいから…
別れるっていうなら、仕方ないって思ってる」
なんだよ…それ…
俺が望むなら…?
俺がそんなこと望んでるなんて
いつ何時何分何秒に言ったんだよ?!
俺は俺は俺は…っ!!!
「どうして?!
俺は…
俺はさ、もう気にしてないって言ってんだろ?!
いつまで意地張ってんだよ?!」
声を荒げる俺に対して、
つとめてたんたんと返事する静香。
「意地なんて張ってないよ…
私なんかがせんせぇと付き合って
いいんだろうか、ってそう思ってるだけだから…」
「私なんかがって…
なにワケわかんないこと言ってんだよ?!
俺はお前がいいって言ってんだろ?!
意味…わかんねぇよ…」
キレそうになるのを必死で抑える。
今は…
ちゃんと話さなきゃ。
これ以上感情に振りまわされて、
すべてをオジャンにするわけにはいかないだろ?
その想いだけで必死に気持ちを抑えたわけであり…
でも…
ここまで言い張る彼女を…
静香をどうやって説得すればいいのかなんて、
さっぱり分かんねぇよ…
多分、今の流れから言ったら、
これをひっくり返すなんてほとんど奇跡に近いってことも
なんとなくだけど俺自身にも分かっていたわけで…
でも…
それでも…
「私なんかがせんせぇと付き合う資格はない」
こんな理由なんかで納得できるわけねぇだろ?!
別れたいって言い張るんだったら…
せめてせめて、
俺が納得出来る理由を持ち出してくれよっ!!
「無理…」
「え?」
「無理無理無理。
お前の言うこと、全然納得出来ない。
別れたいって言うなら、
それ相応の理由を言えよ…
具体的に例をあげて言ってくれよ。
俺が納得いったら、
何も言わずに別れてやるから」
「わ、私は…
別れたいなんて…」
そう言いかけてた彼女は、
何故か途中で言葉をやめて…
諦めに似たようなため息。
しばらく黙ってしまったのは、
何かを考えていたから…?
沈黙の間が30秒ほど続いたあと、
何か覚悟を決めたように、
視線を俺にぶつけてきてさ…
瞬き一つすることなく、
俺を見つめるその視線に、
彼女の決意の程を感じずにはいられませんでした。
「分かった…
じゃあ、ちゃんと言うよ…」
え?
言うの?!(汗)
(゚Д゚≡゚Д゚)
自分からちゃんと説明しろって言っておきながら、
いざ静香が話し始めると、
ビビッている俺って…
ヽ(;´Д`)ノ
聞きたいけど、聞きたくない…
耳の穴をかっぽじって一言も漏らさないようにしなきゃ、
そう思いながらも…
テーブルの上のティッシュを抜き取って丸めて、
耳栓代わりに耳に詰めてしまいたいという矛盾した衝動。
静香の口元がピクピクするのを見ているだけで、
このまま気が狂って死ぬんじゃないか?
マヌケな死に方を頭に浮かべていた、そのときでした。
「せんせぇ…
私ね…
私…」
次回も24時間限定ですっ!!
多分、これで最後の予定です。
それ以降は通常更新に戻りま~す。
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【問題】
彼女が一番気にしていたこと。
それは―――
■初コメントです
長い間、読ませて頂いてるうちに、二人が、そして二人の周りの人が好きになりました。
皆さんが幸せであることを望みます。
もう、胸を焦がすような恋をする年齢でもないので、羨ましいです。