昨年の新語・流行語大賞(「現代用語の基礎知識」選)を覚えているだろうか。一年前なのに、思い出せない人は多いに違いない。
新語・流行語大賞は一年の世相を反映し、話題となった言葉に贈られる。昨年の年間大賞は、トリノ五輪金メダリスト荒川静香さんの「イナバウアー」と、数学者藤原正彦さんのベストセラー「国家の品格」からとった「品格」だった。
荒川さんは「記録よりも(人々の)記憶に残ることを目標にしてきた。これだけ覚えてもらい、オリンピックをやってよかった」と喜んでいたが、一年たってさすがのイナバウアーも話題になることは少ない。「品格」にいたっては、社会の中から消えている感がある。
今年は東国原英夫・宮崎県知事の「(宮崎を)どげんかせんといかん」と、高校生ゴルファー石川遼選手の愛称「ハニカミ王子」と決まった。地方の疲弊に対する知事の叫びが共感を呼び、また控えめな若者が減っているだけに、含羞(がんしゅう)のある表情が好感されたのだろう。
世相は暗く閉塞(へいそく)感が漂うといわれるけれど、「どげんかせんといかん」である。ハニカミ王子のような好青年が増えてほしいとも思う。今年の大賞言葉を、前向きのメッセージととらえたい。
地域間の格差を解消し、若者が明るく生きられる。そんな社会にしていくために、単なる流行語で終わらせられない。