自民党は、食品偽装問題など国民生活を脅かす問題が多発している状況を受け、消費者保護策を検討する「消費者問題調査会」を設置した。来年三月末にも対応策を取りまとめ提言する方針だ。
福田康夫首相は、自民党が先の参院選で生活重視を掲げる民主党に大敗した反省から、国民の安全・安心に軸足を移す政治を打ち出している。所信表明演説では「政治や行政の在り方すべてを見直し、真に消費者や生活者の視点に立った行政に発想を転換する」と強調した。
調査会の設置は、この方針を党サイドからも進めようというものだ。食品偽装のほか、マンションの耐震強度偽装や悪徳商法など幅広く取り上げ、関係省庁や消費者団体、不祥事を起こした企業などから事情を聴き対策を協議する。
この問題では福田首相が十一月二日、全閣僚に国民生活に直結する法令や施策の総点検などを指示し、取りまとめが進んでいる。首相の諮問機関である国民生活審議会は、来年春をめどに、「食べる」「作る」「暮らす」など生活に関係が深い五分野について、消費者・生活者の視点から行政の在り方を検討中だ。
食や住まい、健康など身近にさまざまな危険が潜んでいる。消費者軽視の風潮をはびこらせた原因は、業者らの利益最優先の意識のほか、不作為やあいまいな規定といった生活者の視点を欠いた行政はもちろん、根底には政官業の癒着構造がある。
福田首相の方向性は正しい。実現させるには国民の声を踏まえた積極的な取り組みと、国民生活センターなど直結する機能の充実が欠かせない。選挙対策のポーズに終わらせない首相の本気度と指導力が問われる。