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「子供が考える時間を」「授業方法の改善を」 OECDテストで求められる対策

2007.12.4 21:45
このニュースのトピックス学校教育

 経済協力開発機構(OECD)が4日に結果を公表した生徒の国際学習到達度調査(PISA)で、日本は再び順位を下げた。渡海紀三朗文部科学相も「ゆとり教育」の失敗を挙げた。学習への意欲、関心とも最低レベルで現行学習指導要領で重視されている「生きる力」も育っていないことが浮き彫りに。調査を実施したOECDのアンヘル・グリア事務総長は、日本は応用や活用に必要な能力を育てるよう示唆する。いずれにしても早急な対策が求められている。

 ■授業時間回復を

 なぜ、日本の学力は下げ止まらないのか。

 渡海文科相は授業時間、学習内容削減を進めた現行の学習指導要領に課題があったと言及しているが、東京理科大の沢田利夫教授(日本数学教育学会名誉会長)も「調査のたびに落ちていくのは、ゆとり教育で授業時間が減った影響であることが明らかだ。期間が長引くほどさらに低下するだろう」と、指摘する。

 現行の指導要領の年間授業時間は小学校6年生で945時間、中学3年生で980時間。最も多かった時期は小6(昭和36〜54年度)で1085時間、中3(47〜55年度)は1155時間あった。算数は当時週6時間だったが、現在は約4時間、数学も4時間から3時間に減っている。

 日本より授業時間が少ないフィンランドが前回に続き、最高位を獲得しているとはいえ、現状では授業時間の回復しか打つ手がないのが現状だ。

 ■方法、内容も大切

 理科教育に詳しい東大の兵藤俊夫教授は「授業時間不足で応用も学んでいなかった。活用力を上げるには、教員が社会や生活上の疑問を提示するなど授業方法を改善しないといけない」とみる。

 また、前々回調査(00年)の高1は、小1から理科を学んでいたが、前回の高1から小学1、2年は生活科になったことを指摘。「科学的な思考を習得するには理科を小1から学ぶべきだ」としている。

 平成23年度から施行される指導要領では、中学の選択科目が事実上廃止されるほか、数学で2次方程式の解の公式が復活する。小学校では台形の面積の公式が5年に復活、確率の一部が中学から6年へ移るなど、学習内容が増える。

 早稲田大の中島博名誉教授は、「大切なのは子供がじっくり答えを導き出す時間的な余裕をつくってあげることだ」として、内容の増加を疑問視する。

 ■生きる力伸びず

 同時に行われたアンケートで、生徒の科学への意欲や関心、興味は参加国中最低レベルで、前回および現行指導要領で大きなテーマだった「生きる力」の具体的指標が高まっていないことが明らかになった。

 今回の調査で、日本は記述や論述の問題で白紙回答が他国と比較しても多く、答えを導き出した過程を自らの言葉で説明できない生徒が多かった。

 これまでの「丸暗記」型では「生きる力」は得られず、4日に都内で記者会見したグリア事務総長も「単に知識の記憶だけなら、多くの国の労働市場から消えつつある種類の仕事にしか適さない人材育成となっている」と苦言を呈した。

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