日本サッカー協会田嶋専務理事は4日午後8時半から、オシム監督が家族とのコミュニケーションを取れるようになった、その会話の内容の一部について家族の了解のもと明らかにした。11月16日に脳梗塞で倒れて入院して以来、ICUで治療を受けており、最初の山場は越えたとされていた。ここ1週間で、意識が戻り、家族との会話を1日数分の対話はできるようになっていた。
意識が戻って最初の言葉は「試合は?」だったという。また、現在は、プリンやアイスクリームを少しずつ口にできるようになっており、妻のアシマさんがスプーンでアイスクリームを口に運ぶ際に、「冷たくない?」と聞くと、「冷たくなければアイスじゃない」と、オシムの言葉がわずかでも戻ったようで、これについて、サッカー協会・川淵キャプテンも「オシムらしい。ファンの皆さんにも一刻も早く伝えてほしい」と、急きょ午後8時半からの会見となった。
── 冷たくなければアイスじゃない……
ICUでオシム語録 ──
会話は先週末に家族とやりとりされたもので、このほかに、家族が、Jリーグは鹿島が逆転優勝したことを伝えると驚いていたという。また、W杯3次予選の組み合わせ、ピクシーが名古屋の監督に就任したことなどにも、具体的な内容は明確ではないが、興味を持っていると、田嶋監督は説明した。
監督が倒れてから、ボスニアから長女イルマさんが駆けつけていたが、すでに先週末帰国、代わって次男(ジュリニールさん)が来日し、そばに付き添っている。家族は、千葉、日本代表サポーターから贈られた千羽鶴に感激しており、監督も千羽鶴を理解しているという。
依然ICUでの治療は続いており、「覚醒と睡眠を繰り返す状態」(医師団の言葉)で起きているわけではなく予断は許さない状況だが、一方で、「冷たくなければアイスではない」と、少しでも笑って話すといった、平常時に語られていた「オシム語録」が現時点ですでに出ているということからも、意識レベルは間違いなく正常に近づいており、また脳の思考におけるダメージがほとんどなかったことをうかがわせる。
田嶋専務理事は、「目覚めて最初の言葉が、『試合は?(UTAKMICA=セルボ・クロアチア語で“試合”の意味)』だったことに、オシムさんがいかにプロとして本当にサッカーにかけてきたのかが現れていたと思う」と、感極まった様子だった。
ここまで協会は連日、病状についてできるだけサポーターに伝えたいとしてきたが、病院と家族のプライバシーを尊重するとの考えの間で難しい立場にあった。その中で初めて、監督の言葉が家族から出されたことによって、7日に予定される理事会で岡田武史氏が新監督に就任する際、家族を通じて、監督退任の思いなど、何らかのコメントが出される可能性もあるかもしれない。
(取材=増島みどり)