「例年は九州辺りから流行が始まるのが多かった。しかし、今年は、北海道で患者数の増加が著しく、また東京、千葉、神奈川といった関東地域でも流行し始めている」と国立感染症研究所の安井良則主任研究官。
「インフルエンザワクチン接種の予定がある人は今、すぐ打ってほしい」と、警鐘を鳴らす。
現在、インフルエンザ患者の多くが「Aソ連型(H1N1)」と呼ばれるインフルエンザウイルスが原因とみられている。ただし、これから「A香港型(H3N2)」「B型」と数種の型のウイルスが流行する可能性は十分にある。
インフルエンザウイルスは実に巧妙だ。人間の免疫機構から逃れるために、わずかに遺伝子の型を変えて攻撃を仕掛けてくる。
防御策はワクチンだ。毎年微妙に姿を変えてアタックしてくるウイルスから身を守るため、あらかじめその年に流行しそうなウイルスを「予測」し、それらに対応したワクチンが作られる。ちなみに、今年のインフルエンザワクチンは、前出「Aソ連型」や「B型」などを網羅した混合タイプ。だが、ワクチンをうっておけばひと安心、といいたいところだが毎年、「予測」がピタリと当たるわけでもない。
「半年以上も前に選んで製造しているため、よく流行するものとはズレます。ただ、たとえズレてもワクチンを接種しておけば重症化はしにくいと考えられます」(安井主任研究官)
症状を重くしないためにもワクチン接種は有効。ところで、インフルエンザ流行シーズンのお約束「うがい・手洗い・マスクの着用」が実は、インフルエンザ予防の決定打ではない。
「患者さんが他の人にうつさないために有効だが、マスクだけでは感染は防げない。うがいはのどの洗浄だけで、鼻の粘膜のウイルスは洗えない。手洗いは接触感染には有効だが、飛沫感染を防ぐものではない」
ウイルスは、のどや鼻の粘膜に付着し、数十分とかからず感染する。人込みでウイルスをもらい、帰宅してうがいをしたときには、既に感染済みの可能性が大きいのだ。
流行はすぐそこまできている。たとえ今、ワクチンを接種しても効果が発揮されるまで2週間程度の時間がかかる。それでは今すべきことは?
「粘膜のバリアを保つため、鼻やのどの保湿。日頃から免疫力を低下させないようにすること」と安井主任研究官。年末年始で多忙な時期を迎えるが、睡眠不足や不規則な食生活を見直す。最重要対策は、自身の免疫力強化だ。