政界再編の核は「HANA」だ 反福田!? 勉強会設立の中川昭一“真意”を語る
2007年12月4日 読売ウイークリー
中川昭一・自民党元政調会長が「安倍路線」継承の勉強会を設立する。小泉政権で経済産業相、農林水産相、安倍政権での自民党政調会長を経て6年ぶりの「無役」の中川氏が動き出した真意を聞いた。――本当のところどうなのか。
「アンチ福田でもないし、新しい派閥をつくるという気持ちも全くない。麻生さんを総裁にするための行動隊でもない。そういうふうにとらえられるというのは非常にビックリしてますし、それだけ今、自民党の政治が閉塞しているのかなあ、と。我々メダカが動いただけで、池の中が大騒ぎになるみたいな感じかな。我々はあくまでもメダカの集団。メダカが池の主や王者を襲ったり食ったりすることはありえないんでね。『メダカの会』って名前にしようかな(笑)。
私と麻生さんの政策はかなり近いですし、安倍前首相という存在もあるし、平沼さんも私の親父(故・一郎氏)と大変親しい関係の中で後見人的に参加をしていただいた。これをつなげていくととんでもないことになるんじゃないかという解釈が、派閥力学的にはできるのかもしれませんけど。それでもって政局がどうしたとか考えるのは、私から見れば不思議だし、そんな次元のものじゃない。そう言う人たちを冷ややかに見たいですね、政治記者も含めて。
福田首相に我々も全面協力していかなければならないが、それはそれとして、安倍さんがやろうとした『真の保守』という観点からの大きな政策議論を全部消し去っていくということは決していいことじゃない。憲法改正、公務員制度改革、地方活性化、教育、治安――。またゼロから始めるほど余裕はないでしょ、ということ。危機感ですよ」
――福田政権2か月をどう評価しているか。
「非常によくご苦労されてやっていると思う。経験もあるし、人柄もあるんでしょうけど、じっと我慢してね、丁寧に丁寧に、謙虚にやろうとしていることは、僕なんかにはとてもマネできないぐらい。
ただ、外交に関してはもうちょっとメッセージを出してほしいと思う。北朝鮮(の拉致問題、核問題)とか、東シナ海(のガス田開発問題)とか。(福田首相の考えが)『バスに乗り遅れるな』とか、相手の機嫌を損ねないということであれば、ですよ。相手の機嫌を損ねない外交はそもそもありえない。
僕自身がやったWTO(世界貿易機関)交渉でいえば、まずお互いに相手を傷つけ合うところから始まって、最後にまとまると思っているので。北朝鮮と東シナ海の問題は、日本の国益をまず軸にして、まだこちらから押すべき段階だと思う」
――自民党の世代交代が後退した印象はないか。
「世代交代が至上だとは思わない。時代がベストの人材を選ぶんだとすれば、若けりゃいいというもんではないと思いますよ。でも“若さ”は必要だと思う。その点では、福田さんにしても、麻生さんにしても、若いじゃない。最近、僕とか安倍ちゃんのほうが老けて見える」
――では、先般の大連立を呼びかけた動きをどう見たか。
「民主党の中には、新テロ対策特別措置法を必要だと思っている人もいるし、国連が絶対だと思っている人もいるし、何がなんでもダメだと思っている人もいる。単に所属チームが“クマさんチーム”か“ウサギさんチーム”かというだけで(法案についての賛否が)決まっちゃうというのは、ちょっとね。
政党政治なので、アメリカみたいに党議拘束なしで自由に『賛成』『反対』というわけにもいかないから。だとすれば、大連立というより、政策中心のガラガラポン。自民党ができたときの、憲法改正が合意点だったというような。そうしないと、党首が『右』と言ったら、それだけで賛成か反対かが決まっちゃう。これは非生産的だよね。
だから政界再編をしないと前に進んでいかない。少なくとも、議論がまともにできない。国民投票法だって、あんなに熱心にやっていた民主党の人たちが、(小沢代表の)『鶴の一声』でもって、ゲリラ的抵抗を始めたわけでしょ」
――その政界再編の時期は、いつごろになるのか。
「(笑)知らないよ。その前に衆院選だろうけれどね。衆議院でも民主党が第1党で過半数を取るのか取らないのか、自民党が過半数を取るのか、自民党と公明党で過半数を取るのか、それによってもガラッと変わる。一寸先……どうなるか分からないから。
政界再編の結集軸として、一番わかりやすいのは外交と憲法でしょうね。本当は『大きな政府か小さな政府か』とか、『積極財政か財政再建路線か』というのもあるんだろうけれど」
――次の総裁選で麻生氏を応援するのか。
「決めてませんよ。誰が出るか分からないし。麻生さんは『出る』と言っていて、『次も頼むな』って感じだけど」
――自分で立候補する可能性は。
「そんなこととても考えていない。(今回設立する)勉強会と、この冬どうやって日本経済が乗り切っていくかということを考えている。サブプライム問題を含め、アメリカが世界の経済的危機の震源地になりつつあるわけですから、大変だと思う」
――安倍前首相とは最近会ったか。
「1か月ぐらい前に1時間半ほどお会いした。もうお元気ですよ、十分。ただ、(表舞台に出てきていないのはこちらが)『中途半端に出てくる必要はない』と申し上げているわけで。(ふっくらしたので)『運動不足じゃないですか』と逆に言ったぐらいです」
――麻生、中川、安倍各氏は「ANA」と呼ばれるほど、政策が近い。安倍氏復帰後、平沼さんも加えてグループ結成するというのはどうか。
「平沼さんが入ると『HANA』の会になる。でも、新党というのはありえない。私は自民党を愛しているし、平沼さんが入ってくることはあり得るが、我々が抜けるメリットは何もない。モチベーションもない。そうじゃなくて、民主党が割れた時にどうするかという話だ。
麻生さんとこの前いろいろ話した時、『HANAがいいですか、AHAN(アハ〜ン)がいいですか』と言ったら、『バカ者、HANAに決まっているだろ』と言われた(笑)」
※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。
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