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(愛知)スクールサポーター制

非行防止へ“人の目” 発足3か月 学校と地域橋渡し役に


子どもたちを見守るスクールサポーターの福岡さん(八熊小で)

 学校を巡回したり、防犯教室を開いたりして警察と学校のパイプ役を担う「スクールサポーター」の制度がスタートしてから、まもなく3か月を迎える。慢性的な人出不足に悩む警察署にとっても、貴重な戦力として期待がかかる。ただ、県内では初めての試みで、サポーターの具体的な活動内容もまだ手探りの状態。いかに教師や子どもから信頼を得て、制度を定着させていくかが今後の課題になりそうだ。(米盛菜美)

■OBの経験

 「おらー。こらー。入るぞ!」。今月12日、名古屋市中川区の市立八熊小学校で開かれた防犯訓練で、不審者役の男性がドスのきいた声を響かせた。声の主は、中川署に配属されたスクールサポーターの福岡信雄さん(58)。校舎に侵入して学校職員に取り押さえられた不審者役の福岡さんは、真剣な表情で「もっと力を込めて。不審者が本気で暴れたら逃げられるぞ」とアドバイスした。

 福岡さんは、殺人や強盗事件などを20年近く捜査してきた刑事一筋の県警OBで、江南署を最後に今年3月、早期退職した。現役時代、少年たちによる殺人・死体遺棄事件の捜査も手がけ、事件の背景に加害少年たちの荒廃した生活環境や、見て見ぬ振りをしてきた大人たちの存在を目の当たりにして、「自分が子どもたちの味方になりたい」と、思うようになった。

■人手不足の解消

 県内で昨年1年間に殺人や窃盗などの刑法犯で逮捕、補導された少年は7187人。少年人口は減少傾向なのに、刑法犯はほぼ横ばいの状態が続いている。深夜はいかいや喫煙などの不良行為で補導された少年は5万7912人で、3年前より3割も増えた。

 中川署管内でも今年1月〜4月は、少年の粗暴犯が前年同期比で4割増え、非行防止が最大の課題として浮上した。しかし、署の少年係は事件捜査や取り調べに追われ、防犯教室に1人で赴くことも少なくないという。同署生活安全課少年係の細江いずみ警部補は「最近はインターネットが絡んだいじめや自殺など、学校が舞台になっている事案が増えた。少年事件を減らすには警察だけでなく、学校や地域がこれまで以上に連携しなければならない」と話し、サポーターの存在に期待している。

■手探りのスタート

 福岡さんは4月に研修を終えた後、自転車で管内の小中高校を精力的に回り始めた。しかし、管内には39校もあり、1日に1、2校が精いっぱい。明確な基準やマニュアルがないため、「何を優先させればいいか」と迷うこともあると言い、現場からは「サポーターの仕事が定着するまで最低1、2年はかかるのでは」との声も聞かれる。

 他県では、サポーターが不審者と間違えられるケースが報告されており、認知度のアップも求められる。

 日本女子大学人間社会学部の清永賢二教授(学校安全論)は、「防犯や非行防止に最も有効なのは、人の目だ。サポーターは学校と警察だけでなく、地域の一員として子どもたちに接することが大切。警察も含め、是非、地域社会と学校を接着させる役割を担ってほしい」と話している。

 スクールサポーター
 警察と学校のパイプ役となる県警の嘱託職員。県警は4月から、中川、守山、愛知、春日井、一宮、岡崎、豊田、豊橋の8署に1人ずつ配置した。2年後には20人程度に増やす見込み。全員が警察官OBで、団塊世代の知識や経験を生かす狙いもある。警察庁によると、5年前に埼玉県警で導入されたのが最初で、4月現在、30都道府県警に広まった。


2007年6月20日  読売新聞)
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