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子育て授業に成果 触れ合って知る苦労と喜び

12月4日8時0分配信 産経新聞


 乳幼児と触れ合う経験のないまま親になる人が増えている中、中高生に子育てへの理解を深めてもらおうと、授業に乳幼児との交流を取り入れる試みが広がっている。大阪府立茨木高校(茨木市)では、生徒が乳幼児と遊びながら、母親に子育てインタビューを行うという授業が8年目を迎え、成果を上げている。(伐栗恵子)

 「めっちゃ、かわいい!」

 先月、1年生のクラスで行われた授業。生後数カ月の乳児から幼稚園児までの子供たちが母親と一緒に家庭科教室に姿を見せると、迎えた生徒たちから歓声があがった。ところが、その声に驚いて泣きだす赤ちゃんが続出。つられてべそをかく幼児もいて、教室は泣き声の大合唱に。

 「どうしたら泣きやんでくれるんやろう」「お母さん、どうやって抱っこしたらいいんですか」…。戸惑いながらも、なんとかあやそうとする生徒たちの表情は真剣だ。

                   ◇

 交流授業を企画したのは家庭科担当の入交(いりまじり)享子教諭(53)。これまでもNPOや地域のサークルと連携して高齢者らの話を聞く機会を設けたり、紙おむつを分解して吸水力を調べる実験を行うなど、生徒の目を社会へ向けさせる授業を実践してきた。母子との交流もその一環で、地域の複数の子育てサークルの協力を得て実施している。

 この日、生後10カ月の赤ちゃんを抱っこした若松裕亮君(16)は、「普段、小さな子供と接する機会がないので…」と緊張した様子。初めはぎこちない抱き方で赤ちゃんもむずがっていたが、そのうち安心したように寝息を立て始めた。

 ぎゅっと結んだ小さな手、指先には薄い爪もちゃんとある。「授業で赤ちゃんの人形を抱く練習をしたことはあるけど、全然違う。やわらかくて、あたたかくて。『命』って感じがします」

 授業では、班ごとに分かれて子供たちと遊ぶことになっていたが、他の班に遊びに行こうとする子もいて、なかなか予定通りに運ばない。入交教諭は「生徒たちには、子育ては『かわいい』だけではない、思い通りにならないこともたくさんあるんだということを知ってもらいたい」と話す。

                   ◇

 続いて母親へのインタビューも。子育てのつらさを聞かれたある母親は、「自分の時間がまったくなくなったこと」と返答。自分が風邪をひいても、免疫力のない子供を連れて病院に行くのが心配で、結局自宅で我慢した体験も披露し、生徒たちを驚かせた。

 また、街中で困ることについて問われた母親は「ベビーカーを使っているので、駅でエスカレーターやエレベーターがないと本当に大変。子供をもって初めて分かった。電車やバスに乗るときは周囲の目が気になって、子供の泣き声にとても気を使う」とこぼした。

 それでも、母親たちは「子供を産んでよかった」と声をそろえ、「子供の笑顔が元気の源」「日々の成長を感じられるのが何よりもうれしい」と子育ての喜びを熱く語った。

                   ◇

 「子育ては本当に大変。自分にできるか不安もあるけど、あんなかわいい笑顔を見られるなら頑張ろうという気になるかな」。生徒の上田菜緒さん(16)は赤ちゃんをあやしながらこう話し、「自分もこんな時期あったんや、親にいっぱい迷惑かけてきたんやなあって思う。大事にしてもらったのが分かった」と笑顔を見せた。

 入交教諭は「子育てのゆがみは社会のゆがみとなって表れる。生徒たちには、乳幼児と実際に触れ合い、母親の生の声を聞くことで、子育ての大変さや喜びを実感してほしい」と話している。

最終更新:12月4日8時0分

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