◇障害者の雇用・起業、もっとつくりだせる!--大塚由紀子(おおつか・ゆきこ)さん
知的障害や精神障害のある従業員4人が働く「夢ある街のたいやき屋さん西調布店」(東京都調布市)を9月末にオープンした。4人は、月収が通常1万円に満たないと言われる福祉施設や作業所に通っていた。「おいしい」と、ほかほかの焼きたてを子どもやお年寄りが買っていく。「障害者が働いているお店」の表示や言葉はどこにもない。目下のところ同店の売り上げは予想の1・5倍の月数百万円と好調だ。
バブル時代、大型リゾートなどの不動産コンサルティングを手がける会社に就職。リスクを背負って仕事をしたいと中小企業診断士の国家資格を取り、経営コンサルタントとして99年独立した。2年目にヤマト運輸の小倉昌男会長(故人)と出会った。「知的障害者が1万円に届かない工賃しかもらえないのはおかしい。経営が悪いからだ」との経営哲学や人間性に触発され、障害者の経済的自立支援を目的に現在の会社を03年設立した。
障害者福祉にビジネスを持ち込むことに、福祉の現場からの反発は根強い。「仕事をさせたら障害者が不安定になる」「無理して働かせることを親は望んでいない」。そんな言葉を浴びせられたことも数え切れない。異端を見るような「福祉」の目。でも「お給料が上がってうれしい」「お給料で旅行にいけた」と障害者に言われるたびに間違っていなかったと感じる。
大塚さんの考えが異端ではなくなる日、障害者は福祉から解放されるのかもしれない。<文・野沢和弘/写真・丸山博>
==============
■人物略歴
岡山県出身。日大文理学部卒。ヤマト福祉財団障害者施設向けセミナーの講師を3年間務めた。福祉ベンチャーパートナーズ社社長。夫と1男。44歳。
毎日新聞 2007年12月3日 東京朝刊