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2007年12月03日

【今日のニュース】妊娠前後の喫煙が娘の受胎能を低下させる

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 妊娠前後の母親の喫煙が、その娘の受胎能を3分の1に低下させる化学的経路(ケミカルパスウエー)が明らかにされ、米医学誌「Journal of Clinical Investigation」12月3日号で報告された。

 カナダ、マウントサイナイMount Sinai病院(トロント)のAndrea Jurisicova博士らは、たばこの煙に含まれる多環式芳香族炭化水素(PAH)がマウスの受胎能に及ぼす影響を調べた。妊娠中の喫煙が子どもの受胎能に影響を及ぼすことはレトロスペクティブ(後ろ向き)研究で示されているが、その生物学的背景に関する研究は今回が初めて。

 Jurisicova氏らは、雌のマウス3群に、低用量のPAH混合物を受胎前と授乳期の両方、受胎前のみ、または授乳期のみ皮下注射し(3週間のPAH投与量はたばこ25箱に相当)、別の1群にはPAHを投与せず、同時期に交尾させた。その結果、PAH投与群では同腹仔(offspring)は少なくなかったが、生まれた雌の卵子数を調べた結果、卵子を産生する卵胞が3分の2(約70%)少なかった。

 PAHによる雌の子孫の卵胞数減少には、細胞死を引き起こす蛋白(たんぱく)を作り出す遺伝子の発現に影響を及ぼす受容体が関与していることが明らかになった。同氏らは「PAHが子宮内でその受容体と結合し、活性化された受容体が細胞核に入り、最終的に卵子を殺してしまう遺伝子を刺激する特定のDNA配列を見つけ出す」と説明する。免疫不応答性マウスに移植したヒトの子宮組織でも同様の影響が認められた。

 Jurisicova氏は、母親が妊娠中ではなく妊娠前や授乳中にPAHに曝露されることで娘の受胎能が低下する可能性があると指摘。さらに、今回の研究では、PAHに曝露したマウスにワインやブドウの皮に含まれる抗酸化物質のレスベラトールを注射すれば、仔の卵胞減少が予防されることも示されたが、補助食品としてこれを経口摂取しても十分に血中濃度が上昇せず、少なくともマウスでは効果は認められなかった。

 米国肺協会(ALA)のNorman Edelman博士は、この知見が、喫煙癖のある母親を持つ娘で受胎能が低下するといったこれまでの疫学的結果を生物学的に裏付けるものだと述べ、米ニューヨーク・ワイルコーネルWeill Cornell医療センター(ニューヨーク)のAmos Grunebaum博士は「女性が妊娠を考える前に禁煙すべきであるということが重要」としている。(HealthDay News 11月21日)





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