◎まちづくり三法 地域全体の利益を考えて
大型商業施設の郊外立地を原則禁止する改正都市計画法が全面施行され、いわゆる「ま
ちづくり三法」の見直しが完成した。北陸でも大型ショッピングセンターが続々誕生し、中心部の商店街は、人出が減る傾向にある。中心市街地の再生は待ったなしの課題だが、その半面で、まちづくり三法は、消費者に不利益をもたらしかねない側面もある。行政は地域全体の利益を考えて、慎重に運用にあたってもらいたい。
改正都計法は、延べ床面積が一万平方メートルを超える店舗や飲食店の郊外出店を規制
し、新規出店を中心部の「商業地域」などに絞った。先に施行された改正中心市街地活性化法などとともに、地方都市の空洞化を防ぐ狙いがある。
しかし、大手流通業者の郊外出店が難しくなるからといって、即座に中心商店街への出
店ラッシュが始まることはないだろう。町の中心部で広い土地を確保しようにも、所有者が細分化され、権利関係が複雑に絡み合っている場合が多い。特に金沢市や高岡市など、戦災に遭っていない都市はなおさらである。
北陸全体を見渡しても、大手流通業者による郊外型の大型店出店はあらかた終わった感
がある。改正都計法の施行を見据えて投資を急いだ分、これからは出店を絞ってきても不思議はない。そんな不利な状況下で中心部への出店を促していくには、地道に魅力あるまちづくりを進めていくしかない。
ただ、三顧の礼で迎えようとしても、業者は利益の見込めるところにしか出店しない。
県外からの進出企業には、むしろ「企業市民」としての責任を果たすよう求め、あくまで地元が主体になって活性化に取り組んでいく覚悟がいる。
大型商業施設の出店ラッシュは、マイカーで郊外に買い物に出るライフスタイルを定着
させた。それでも、少子高齢化の進行で、コンパクトな都市機能の便利さが見直されてくる可能性がある。金沢市や富山市などでは、まちなかのマンションが売れている。北陸新幹線の開通をにらんだ先行投資という理由のほかに、中心部の暮らしやすさが見直されてきているのではないか。まちづくり三法をそんな大きな視点でとらえ、中心部の活性化に生かしたい。
◎ガス田開発問題 日中双方の利益にしたい
日中両国にとって初のハイレベル経済対話で、双方が先に合意した戦略的互恵関係の推
進に基づき、環境・省エネルギー分野での技術協力強化や、日本のコメ百五十トンの追加輸出など多くの点で一致をみたが、両国間における最大の懸案ともいえる東シナ海でのガス田開発をめぐる食い違いについては「高度な政治性」が絡むとして福田康夫首相の訪中まで持ち越された。
この問題には相互の主権が深くかかわり、主張の隔たりが大きい。その隔たりを「政治
決断」によってどう決着するのかよく分からないが、日本としては戦略的互恵関係に背かない公平な共同開発を中国に求めていきたい。
ガス田開発問題は中国によって引き起こされたということをまず指摘しておきたい。中
国は一九七〇年代から積極的に海洋に進出し、とくに八〇年代以降は「領海及び接続水域法」を定めるなど、沿岸海域管理はもとより、海洋管理を着々と進めてきた。その延長線上で、日中中間線ぎりぎりの海域で天然ガスを採掘する開発に着手した。
中国側の海域にあるガス田から日本側の海域にあるガスまでストローで吸い上げる開発
だと、日本側が抗議した、いわゆる「春暁ガス田群」である。
厄介なことに領海の認識が異なるのである。日本は国連海洋法条約の精神を尊重して排
他的経済水域が隣国と重なり合う場合、中間線と決めたのに対し、中国は「話し合いで決める」としただけで、二百カイリ全域を中国の海だと主張している。日本の抗議で中国は「共同開発」を持ち掛けているが、地質構造調査を日本に提供しようとしない。これでは中国の実効支配下での共同開発になる恐れがあり、日本は同意していない。
こうした中国の横車に対して、南シナ海で中国と対立したベトナムは、うまい説明をし
たといわれる。「人のポケットのお金をつかんでこれで一緒に食事をしようということだ」と。日本国内には、日本がぼんやりしていたため、してやられたのだという人がいる。一面真実を突いた指摘だが、それでは国際秩序が無法に屈してしまう。日中双方の利益にする方向での解決を目指したい。