すっかり師走の恒例行事として定着した。「今年の漢字」の発表である。その年の世相を象徴する漢字が京都の清水寺で和紙に大書される。今年も中旬に予定されている。
日本漢字能力検定協会(京都市)が一九九五年から募集を始め、今回で十三回目になる。応募者は初回の一万二千人から昨年は九万二千人と大幅に増えている。今年は五日まで受け付けているという。
果たして何になるか。関心の高まりを反映し、本紙「ちまた欄」でもしばしば予想を目にする。有名土産物店や高級料亭などで食品の表示偽装が相次いだため「食」や「偽」を挙げる人がいた。
「乱」がふさわしいという意見もあった。政治家の事務所経費問題、前防衛事務次官の収賄事件など政官界で風紀や規範の乱れが目立ち、大相撲やプロボクシングなどのスポーツ界では大きな混乱があったからだ。
「驚」も有力ではないか。小泉純一郎元首相は「人生には上り坂もあれば、下り坂もある。もう一つは『まさか』という坂だ」と安倍晋三前首相の突然の退陣表明を受け、驚きの気持ちをこう表現した。その後、自民党との大連立問題で小沢一郎民主党代表の辞任表明も国民を驚かせた。
残念なのは明るい世相をイメージさせる漢字が、すっと出てこないことだ。来年は心が弾むような字が、次々に思い浮かぶ年になってもらいたい。