法制審議会に諮問された少年審判の傍聴は、「真実を知りたい」という犯罪被害者らの長年の願いに応えたものだ。しかし、少年法は非行少年の保護更生を目的としており、その是非を巡ってさまざまな意見がある。
「傍聴で憎しみをぶつけるのではなく『二度と事件を起こさないで』と言いたい」。5人の中学生から暴行され、27歳の長男を亡くした東京都大田区の高谷孝子さん(62)は、今回の諮問を歓迎する。同級生たちのいじめで、当時中学2年の長男を亡くした福岡県筑前町の森美加さん(37)も「少年事件の遺族には、加害少年がどう育っていくか、どう更生していくかを見届ける権利があるのでは」と語る。
少年審判が非行から間もない段階で開かれる。未熟な少年が被害者や遺族を前に反省を深められるかについて、懸念する専門家は多い。
少年法に詳しい沢登俊雄・国学院大名誉教授は「審判の段階で被害者に(加害少年の)情報を開示するのは早すぎる。深い反省と、謝罪の方法を模索する気持ちが芽生えてからにすべきだ」と語る。少年事件の付添人を務めた経験が豊富な福岡県弁護士会の八尋八郎弁護士も「審判官(裁判官)が遺族を気にして、少年の立ち直りを促す審理をできない可能性もある」と指摘する。
「審判に被害者の親がいたら、その場では形だけ謝ったかもしれないが、本当の謝罪ではなかったと思う」と語るのは、福岡市内の会社員の男性(24)だ。暴走族に属してけんかに明け暮れ、15~17歳の間に4回逮捕された経験を持つ。男性が、自分が更生できたと感じたのは、社会に出てからという男性は「今、やっと当時の被害者たちに申し訳ないと思うようになった」と語った。【川名壮志、坂本高志】
2007年11月30日