ネットの掲示板2ちゃんねるで、運営者である「ひろゆき」こと西村博之さんが失踪したと噂されている。運営者の失踪で、掲示板存続を心配するカキコミまで登場した。しかし、実際には2ちゃんねるが閉鎖される可能性はほとんどない。
西村さん失踪の情報を聞き、2ちゃんねるでは掲示板が閉鎖すると見る人もいる。
「ひろゆきー!閉鎖しないで!!2ちゃんねるのお陰で色んな隠してある事実が知れたのに…2ちゃんねるは悪い書き込みばかりじゃなかったのに……」「終了?」「2chなくなってもすぐ作れるけどなw」
こんなカキコミがあるのは確かだ。
以前から、全く所在はつかめない
ただ、西村さんの失踪問題が持ち上がったのは、実は最近のことではない。今回は「裁判で自己破産した」といううわさも加わっているらしい。2ちゃんねるによって名誉毀損などを受けたとして、仮処分申請にかかわった弁護士は、次のように述べる。
「ひろゆきの失踪についてはもう1年半前から言われていた。というのも、こちらから仮処分の書類を送ってもまったく対応がない。彼が役員を務める会社に送って、何度か書類を受け取ってもらったことはある。しかし、彼はそれを警戒したのか、会社に受け取らないように指示したようだ。会社でも受け取ってもらえず、どこにいるのか全く所在がつかめない。逃亡説が出るのはある意味当然かもしれない」
2ちゃんねるによって業務妨害や名誉を傷つけられたとする人はかなりの数に上るらしく、被害者の依頼を受けた弁護士は、発信者情報開示制度に従って西村さんに問題のカキコミのログの公開を要求している。しかし、運営者の西村さんは、ほとんどこれに応じなかったという。仕方なく、被害者側は仮処分申請をするわけだが、それでも西村さんの居所がつかめないために訴訟が成立しない。
開示を命じる仮処分が出た場合でも、西村さんの対応はなく、間接強制で1日5万円の制裁金も加算されているが反応はない。姿を消しているために、訴えている方も手も足も出ないというわけだ。
過去に西村さんが判決に応じたケースもあることにはある。00年に日本生命が名誉毀損的なカキコミの削除を請求し、01年に東京地裁が西村さんに問題のカキコミの削除を命ずる仮処分の決定を下した。西村さんは、これに従い問題のカキコミを削除した。しかし、判決の約1ヵ月後には、西村さんは「削除したものを公開していますー。」として、これらのカキコミを画像として読み込んだデータを公開した。
「失踪」でも2ちゃんねるが閉鎖しない事情
このようなことから、西村さんに対して「許しがたい」「どうしょうもない奴」などと怒る弁護士もいる。もちろん、西村さんが「失踪」して訴訟ができないケースもあるわけだから、途中であきらめる依頼人も数知れない。依頼された弁護士も「最大限努力しているが、非常につらい」と打ち明ける。
しかし、こうした状況下でも2ちゃんねるが閉鎖しない事情がある。ネットに詳しい牧野二郎弁護士は次のように述べる。
「表現の自由の関係で、サーバーを止める決定を裁判所がすると考えるのは難しい。決定が仮に出たとしても、実力行使で警察官や執行官がサーバーを止めるとは想像しがたい。しかも、2ちゃんねるのサーバーは海外にあるみたいですからね」
違法とされる書き込みが放置されても、西村さんが失踪しているために誰も何もできないというわけだ。さらに牧野さんは次のように言う。
「書く人の自由、表現の自由は保障されなければならないし、制限してはいけないとは思う。しかし、最低でもサーバーの管理者が管理責任を果たさなければならない。自分がサーバーを管理していることを届け出るといった法整備も必要かもしれません」
西村さんについては、広告費用などで多額の収入を得ている、という説もあるが、賠償金の支払いには応じていない。住民票のある東京新宿区の西村さん宅のポストには裁判の送達文書などが溢れているという。