国立劇場は「それぞれの忠臣蔵」と題し、12月公演で忠臣蔵の外伝物3本の上演を始めた。「堀部弥兵衛」「清水一角」「松浦の太鼓」で、宇野信夫作品の「堀部」は1974年以来、河竹黙阿弥作品の「清水」は61年以来の上演だ。
「堀部」は浪人、中山安兵衛と彼にほれこんで婿にと願う弥兵衛の物語。中村吉右衛門の弥兵衛、中村歌昇の安兵衛。
「清水」は吉良方の清水一角が主人公。酒乱で姉にも意見される一角が、赤穂浪士の討ち入りを知るや、さっそうと駆けつける。市川染五郎の一角、中村歌六=同右から2人目=の丈左衛門、中村芝雀=同左から2人目=のお巻。
「松浦」の主役は吉良邸の隣に屋敷を構える大名、松浦鎮信。赤穂浪士びいきで、大高源吾の妹、お縫を腰元にしているほどの松浦は、討ち入りが決行されないのが不満で、お縫に暇を出そうとする。吉右衛門の鎮信、芝雀のお縫、染五郎の源吾、歌六の宝井其角。
「『堀部』が昭和、『清水』が明治、『松浦』の原作は江戸時代に作られました。その時代を反映したお芝居になれば」と吉右衛門。「堀部」では監修もする。
「浪士の生活が描かれているので、その雰囲気が表現されればと思います」と歌昇。一角も源吾も初役の染五郎は「黙阿弥作品なので、一角は酔っていても音楽的なセリフ回しが必要になります。『松浦』は源吾の物語りで浪士の討ち入りが説明されます。重要な役です」と意欲を見せる。
26日まで。問い合わせは同劇場チケットセンター(0570・07・9900)へ。【小玉祥子】
毎日新聞 2007年12月3日 東京夕刊