小浜市雲浜小は30日、1997年1月に起きたロシアタンカー「ナホトカ号」の重油流出事故の際、子イルカ「ラボちゃん」の救助に奮闘した越前松島水族館=坂井市三国町=の鈴木隆史館長(49)を招いた学習会を行った。当時の実話を基にした絵本を読み聞かせられた児童は奇跡の救助劇に感動し、命の大切さをあらためてかみしめた。
同校は「いのちの学習」と題した取り組みを学校教育の中核に据え、いじめ問題や動物愛護について学んでいる。体育館で行われた学習会では、全校児童約280人が鈴木館長を拍手で迎えた。
重油流出事故の映像を見た後、鈴木館長が文章を担当した絵本「イルカのラボちゃん」(福井新聞社刊)を、小浜市内で絵本の朗読活動を行っている入江深砂さん(46)=同市=が情感たっぷりに読み上げた。
イルカ親子が海から押し寄せる重油で生存を脅かされ、水族館スタッフやボランティアが悩んだ末、生後半年の子イルカを移送し、無事に水族館に帰って来るまでを描いている。児童は「小さな命を救うためにたくさんの人が協力する姿に感動した」「イルカを運ぶ決断をする場面が心に残った」と感想を鈴木館長に伝えた。
当時、飼育課長だった鈴木館長は「重油流出事故の日は宿直の当番で、双眼鏡でタンカーの船首が流れてくるのが見えた」「水族館周辺だけでドラム缶200本分の重油を回収した」「延べ500人のボランティアたちがイルカを救う活動に参加してくれてうれしかった」と当時を振り返った。
県外移送の日まで24時間態勢でプールに浮かぶ重油をすくったことや、きれいな海に戻るまで2カ月かかったこと、親子がお互いを確認できるように並べたことなどのエピソードも披露。現在のラボちゃんについて「11歳になり、体長260センチ、体重200キロに成長。今ではイルカショーの人気者になっている」と伝えた。
6年生の浜頭圭佑君は「こんな大変なことがあったなんて知らなかった。小浜で同じような事故が起こったら僕も頑張る。動物の命を大切にしたい」と話していた。