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アジアの街の「ニホンファン」に苦笑い

Tシャツにプリントされた「つづく」「いじめ」…

小澤 健二(2007-12-02 17:00)
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 先日、香港に行ってきた。何回かここには来ていて、香港島や九龍、ビクトリア・ピークや女人街、さらには電車に乗って深圳経済特区にも行った。

香港の夜景(ロイター)

 私が今回行ったのはジャスコだった。

 国内外問わず、私が旅先でかならず行く所は、地元のスーパーやデパートの食品売場だ。行った場所の、素の台所事情がわかる。国内でも地方都市では、東京で見かけないような、ローカル色溢れる食物が並び、新たな発見をすることも少なくない。僕の旅の楽しみの1つである。

 そう言うわけで、香港ジャスコに行ってみた。店内のレイアウトは日本のジャスコと一緒なので非常にわかりやすい。

 香港は生鮮食料品がほとんど輸入品ということで、物価は中国本土に比べて高めだ。そんな品揃えの中で、ひときわ高かった商品、それは日本製品だった。

 たとえばペットボトルのお茶などは、日本製のものは日本円で約240円。ちなみに同じ500ミリリットルのペットボトルでも、中国製のものは約100円であることを考えると、いかに「高級品」であるかがわかるだろう。

 同じ日本のメーカーのドリンクでも130円くらいで売っている商品もあるが、それは現地生産したものである。それを考えると、「MADE IN JAPAN」崇拝は相当なものだ。

 東アジアの国を巡ってみて思うのは、どこの国も、微妙な違いがあれど、日本文化というものに興味を持っていると言うことだ。

 「反日的」と言われる中国や韓国でも、ナイキやアディダス並にアシックスやミズノのスニーカーやスポーツウェアに身を包み、テレビで放映されているのは日本のアニメだ(もちろん現地語に吹きかえられている)。「不本意」ながらも、日本文化や日本製品に憧れているのだ。

 「反日的」な国でもこうなのだから、「親日的」な台湾や香港ではもう歯止めが効かない。

 数年前に台湾で「哈日族(はーりーぞく)」という言葉がはやったが、これは日本にかぶれている人のことを揶揄して言う時にも使われていた。けれども全般的に、日本語を勉強していたり日本に興味がある「日本大好き」な人たちのことを指す。

 それを考えると、台湾や香港は「哈日族の国」と言っても過言ではない。

 その象徴が「10元ショップ」だ。

 日本でもおなじみになった「100円ショップ」の元祖と言われるダイソーが、アジアにも手を広げていて、東アジアの国では至るところに出店している。

 香港では10元(およそ160円)コイン1枚で商品を購入できる。いろんなものが売られているのだが、店舗のレイアウトや品揃えが日本のそれと一緒なのだ。

 「一緒」と書いたのは、日本の店舗と「一緒」ということだ。店に並んでる商品も、日本からそのまま持ってきたものなので、商品の包装も説明も当然のことながら日本語オンリーなのだ。店内にいると、パッと見にはその店が日本の店舗か香港の店舗かまったく区別がつかない。

 店内を良く見ると、確かに広東語のPOPなどが見られるが、それよりもはるかに大きい、おびただしい日本語のPOPが店内を「支配」している。まさにそこにあるのは「日本」だった。そして嬉しそうに「日本製品」を物色している現地人の人たち。しかしながら、商品のほぼ全てが「made in CHINA」とは、「究極の皮肉」だ。

 アジアの街を歩いていると、日本語の書いてあるシャツやトレーナーを着ている人を普通に目にする。ところが、その言葉を見ると、「つづく」とか「いじめ」とか、「殺せ」など、服にプリントするには似つかわしくない言葉がでかでかと躍っている。

 盲目的な「日本礼賛」に戸惑いを覚える。思わず「苦笑い」してしまった。

 その時、学生時代のエピソードを思い出した。英語を教えていたアメリカ人教師の言葉だった。

 「日本人って、そんなに英語がすきなのに、何で理解しようとしないのだろう?」

 何のことかと彼に聞くと、僕らがよく着ていたTシャツやトレーナーに、英語がプリントされているものがある。

 それらの英語のほとんどが意味不明で、おかしな言葉ばかりだと言う。そんな服を着ている日本人に「苦笑い」を浮かべてしまうと言っていた。アメリカ人教師の「苦笑い」が、10数年後の僕のアジアでの「苦笑い」に通じている。

 確かに、外国人が日本という国や日本文化を好きになってくれることに対しては、とても嬉しいし、日本人であることを誇りに思う。

 しかし、哈日族の「日本好き」は「あばたもエクボ」といった感じで、なんとなく違和感を感じる。異文化を受け入れるのは大切なことだと思うが、何でもかんでも「鵜呑み」にするというのは危険な気がする。

 自国の文化を、ないがしろにする人間はろくなものじゃないと言うが、それは私たちにもいえることだろう。

 日本人の中にも哈「欧米」族は多い。僕らも外国人から「苦笑い」されないようにしなければならないと、つくづく感じた旅だった。

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