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【今、何が問題となっているのか】人員削減…自衛隊の苦悩

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 防衛省・自衛隊内で「警察官がうらやましい」というぼやきを続けて聞いた。他の公務員同様、自衛官数も一律削減する政府方針をよそに、警察・消防官は増員となる不合理への羨望(せんぼう)であった。だが、耳を傾けているうちに、ぼやきは「安全保障に関する優先度の低さ」への悲憤に、さらには「軍人」ではなく「公務員」にくくられている自衛官の地位への悲哀へと変わっていった。
 2006年6月、総人件費改革を進める行政改革推進法が施行され、行政機関職員の定員は06年度から5年間で5%以上純減する方向になった。社会保険庁職員ら、働かない公務員は徹底的に削減すべきである。
 防衛省・自衛隊も「民間委託などにより、行政機関職員に準じて純減させる」(行革推進法)とされた。5%とは陸自8000人、海・空自衛隊各2000人程度に相当する。ところが、自衛官同様、国民の安全・安心を担う警察・消防官について、行革法では「(警察官ら)地方公務員4 .6%以上の純減を要請する」とした、国家公務員に準じた地方公務員削減政策を横目に、増員が続いている。自治体の治安への不安を受けた方針だ。この落差は、総人件費改革を担当し、わが国を守る兵力について生殺与奪の権を事実上握る中央政府=行政改革推進本部・財務省と、警察・消防官数に決定権を有する自治体の、安全保障に対する危機感の強弱を反映している。
 わが国はテロを受ける可能性を秘め、国際社会からは平和への軍事貢献を強く求められている。それ以前に、周辺を害意ある軍事大国に取り巻かれ、いまだ緊張が続く。増員や装備充実こそ急務であるのに、防衛関係費は過去5年間に1500億円も削減された。大幅減員がいかな危険を生むのか、国民が身近に感ずる災害に関し、専門家とシミュレーションした。
 常備陸上自衛官14.8万人から8000人が割かれたとする-。
 陸自での8000人削減は率的に、日本の人口に対する栃木、群馬、茨城の3県民数に匹敵する。一方、中央防災会議によると、阪神・淡路大震災における建物全壊・焼失は11万1888棟で、東京湾北部に起きる恐れのある首都直下地震ではその7 .6倍の被害が予想される。阪神・淡路では1日当たり最大1万8758人(延べ1 64万人)の陸上自衛官が派遣されたから、1日14.2万人、つまり、削減後は陸上自衛官を総動員しても災害に対応しきれない計算だ。
 安全保障は最悪の事態もシミュレーションするのが鉄則だが、もっと少なくても済むとしよう。それでも、過去最長の災害派遣は1658日(雲仙普賢岳噴火)、派遣回数も年間平均3 80件を数える。1日1回以上、どこかの部隊が被災地入りしている現状では、超弩級(どきゅう)の地震がひとたび発生すれば、国防を担う戦闘集団は災害派遣だけでパンクする。諸外国や国連の要請が高まる一方の災害や平和維持のための派遣は、国内警戒を優先させるのなら、実施を躊躇(ちゆうちよ)せざるを得ないのが現実だ。
 ところで、京都大学防災研究所巨大災害センターの試算では、阪神・淡路における生存率は1日目に救出された被災者の74%に比し、2日目は26%と加速度的に低くなる。また、阪神・淡路では、被災地における派遣部隊の機動は時速5キロ=1日(実働20時間)1 00キロ程度。2地点間の道のりが直線距離の2割増しだとすると、24時間以内の救出には、被災地から半径80キロ内に1カ所駐屯地が在ることが理想となる。逆に、8000人の陸上自衛官削減は5 00人規模の16駐屯地閉鎖を招く。 
 四国の陸自駐屯地はわずか3カ所。仮に高知駐屯地が無くなると、24時間以内の陸自到着が18市町村(60万人)で不可能となる。そうした最悪の事態を回避しつつ、総人件費改革に応えようと、陸海空自衛隊では一線部隊の実動兵力確保のため駐屯地・基地の調理や装備の整備担当者ら6000人分の民間委託を検討している。戦力低下は覚悟の上である。かかる厳しい情勢で、09年度末に新高知駐屯地、11年度末に新徳島駐屯地を新設するのは、国民の命を最優先にした措置だ。
 ところで、自衛隊にかかわる「行政機関に準じた純減」の「準じる」の真意に関し、行革推進本部では「常識の範囲。具体的数字はない」と説明している。わが国の安全保障・危機管理環境を考えれば、一線部隊の戦力をダウンさせるわけにはいかない。純減は「6000人規模」が「常識」の線ではないか。
(政治部専門委員 野口裕之)
      =毎週日曜日掲載

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  1. ユーザー自衛隊は人員削減すべきではありません。
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    自衛隊も公務員として5%の人員削減の対象になっているとのことですが、自衛隊は必要最小限の人数しかおらず、5%の削減は致命的だと思います。自衛隊は陸海空合わせて24万人、即応予備自衛官はわずか9000人…
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