2007年12月03日 更新

星野ジャパン

もう隠さない!星野監督、堂々予告先発!ダルで「北京」決める

三回、阿部のタイムリーで生還した川崎(右)をダルビッシュは笑顔で出迎えた

三回、阿部のタイムリーで生還した川崎(右)をダルビッシュは笑顔で出迎えた

 (北京五輪アジア予選決勝リーグ、韓国3−4日本、日本2勝、2日、台湾・台中)日本が韓国に4−3で勝利。北京五輪出場に王手をかけた。3日の台湾戦はダルビッシュ有投手(21)=日本ハム=が先発する。大一番を前にエースは気合十分。日本最高右腕がジャパンに「北京キップ」をもたらす。

 もう、隠す必要はない。試合終了直後のインタビュー。星野監督が堂々の予告先発だ。

 「あした(3日)はダルビッシュにかけるよ」

 言われるまでもない。準備は万端だ。韓国を破り、歓喜にわくナインを笑顔で出迎えたダルビッシュ。体中にアドレナリンがみなぎっていた。

 「(練習では)やりたいことはできました」

 短いフレーズに決意を込めた。さあ、出陣。1日はブルペンで投球練習を行うなど、ここまで順調な調整を続けてきた。「できるだけ長く投げたいですね」と話すなど、風格さえ漂わせた。

 プロに入って初めての海外の試合。決戦のマウンドは日本より急傾斜だが「マウンドにこだわりがないので(違いは)感じない」と気にしていない。本来の投球ができれば、負けるはずはない。自信がある。

 背番号「18」を託され、星野監督から日本のエースに指名された。今季は奪三振、沢村賞、ゴールデングラブ、ベストナイン、そしてMVPと5冠を獲得した。残された仕事はあと一つ、来年の五輪出場権をつかむことだ。

 10月には父親のイラン国籍と母親の日本国籍の両方を持っていたが、このアジア予選と女優サエコとの結婚を機に、日本国籍を選んだ。まさに日の丸を背負った21歳が、北京への道を切り開く。

★成瀬いきなり被弾…6Kも反省2失点

 大一番に先発した成瀬(ロッテ)だったが一回に先制ソロを浴び、四回にも連打で1失点。6三振を奪う力投も、四回途中、3安打2失点でマウンドを降りた。22歳の左腕は「(打たれた)3本のヒットはカウントをとりにいって、変化球が甘くなってしまった。もったいなかったです」と自らを責めた。

ガッツポーズの川上

ガッツポーズの川上

★きっちり中継ぎ!

 川上(中日)が2番手で1点差の四回二死二塁から登板し、2回を1安打無失点。五回二死一、二塁で先制本塁打を放った高永民を直球で見逃し三振に取ると、拳を突き上げた。「あとの投手にとにかくいい形でつなぐことだけを考えていた。緊張感のある1点差の場面で自分の力を出せたことはホッとしています」。慣れない中継ぎで結果を出し、六回途中で岩瀬へとバトンを渡した=写真

リードを守った岩瀬

リードを守った岩瀬

★岩瀬、無我夢中救援「意外と苦労した」

 岩瀬(中日)が六回二死一、二塁からリリーフ。八回に1点を失ったものの、シーズン中にもなかった2回1/3のロングリリーフで、ストッパーの上原(巨人)へとバトンをつないだ。「意外と苦労した。アウトを取ることだけを考えた。(藤川の温存に)そういうことは忘れていた」と無我夢中の熱投だった=写真


★4番・新井が逆転を呼び込む

 4番・新井(広島)が、1点を先制された直後の二回先頭で左翼線に二塁打。この回の逆転を呼び込んだ。「必死でした。みんな、この試合にかけていたので本当によかった」。前日(1日)のフィリピン戦の先制打に続いて、価値ある一打。好調を維持して重責を果たしている。

★大村が同点タイムリー

 1点ビハインドをはね返したのは大村(ロッテ)。二回二死一、三塁から左前に同点タイムリーを放った。「チェンジアップかスライダーです。監督から『(バッティング)ゾーンを上げていけ』といわれた」。星野監督の指示通り、やや高めの変化球をはじき返した。ふだんは「つなぎの4番」だが、この予選では8番。まさにつなぐ打順で、前日1日のフィリピン戦でも3安打と、本領発揮している。

◆韓国戦の勝利に宮本(ヤクルト)

「きのう(1日)宿舎で、自分のためじゃなく国のため、野球界のために戦うことを再確認した。一生懸命やったからそれでいい、という大会ではない。あす勝たないと意味がない」

◆二回の好機に凡退した村田(横浜)

「力が入ってしまった。後ろの打者がカバーしてくれてよかった」

◆三回に左前適時打を放った阿部(巨人)

「チャンスだったので積極的にいきました」

◆六回に失策を記録した川崎(ソフトバンク)

「投手がカバーしてくれた。チームのみんなに感謝」

◆八回無死二塁で代打で登場し、送りバントを決めた井端(中日)

「緊張する場面だったけど、一塁側に転がせばいけると思った。うまくいって良かった」

ガッツポーズの稲葉

ガッツポーズの稲葉

◆八回に右前適時打を放った稲葉(日本ハム)=写真

「無我夢中でした。ガッツポーズは普段しないけど、自然と出ましたね。気持ちで打ちました」

◆接戦を制したことに田淵ヘッドコーチ

「日の丸を背負う重さをあらためて知った。八回は監督が“死に物狂いで点を取れ”と言った。あれが本当の点の取り方だ」


■データBOX

 〔1〕日本のプロ選手が参加した日韓戦は、99年9月のシドニー五輪予選が最初で、今回が13試合目(韓国側もプロ選手参加)。対戦成績は7勝6敗となった。
 〔2〕長嶋ジャパンのアテネ五輪予選(03年)は、日本2勝、韓国1勝1敗の最終戦で激突。日本が2−0で勝ち、3連勝の1位で五輪切符を獲得。2位突破は2勝1敗の台湾だった(前回はアジア2枠)。


★韓国一歩及ばず…金卿文監督「失望はしていない」

 韓国は再三得点圏に走者を進め、八回には1点差に詰め寄ったが、あと一歩及ばなかった。金卿文監督は「少しの差で負けて残念。だが、若い選手を使っていい経験になったし、失望はしていない」と敗戦を受け入れた。台湾−日本の結果次第では、五輪切符が転がり込んでくる可能性があるが「(最終予選の)3月にあらためていい試合をしたい」と出直しを誓っていた。

(共同)

★全国4カ所でPV

 日本Vs韓国のパブリックビューイングが東京・新宿の映画館「新宿バルト9」など全国4カ所の映画館で行われた。新宿に集まったファン約150人は、大スクリーンと迫力ある音響で大一番を観戦。日本選手の好プレーには大きな拍手と大歓声がわき起こり、会場はヒートアップした。東京・豊島区から訪れた相吉太郎さん(31)=会社員=は「負けられない戦いだった。よく勝ってくれた」と顔を上気させて喜んだ。