武田信玄に伊達政宗…名をはせた戦国武将が、若い女性の間でブームになっている。武将をモチーフにしたファッションや雑貨などが売れ、武将グッズを扱うイベントも開かれて盛況という。壮年男性の独壇場とみられていた戦国モノだが、女性にとって戦国武将は自分の代わりに夢を実現してくれるヒーローに映っているようだ。(村上智博)
「天才軍師、真田幸村の家紋の六連銭が格好いい」「私は男気のある上杉謙信が好き」
先月16日から18日、東京・代官山の展示スペースで開催されたイベントで若い女性たちが、歴史談議に花を咲かせた。
イベントは戦国武将をモチーフにしたグッズなどを紹介する「天下『布』武プロジェクト 戦国ART祭」。来場者の大半が10代半ばから20代後半の女性。武将の人形や家紋を入れたニット帽、Tシャツなどを見ては歓声を上げていた。
東京都小平市の専門学校生、田尻佳代さん(24)は伊達政宗の大ファン。「したたかに戦国を生き抜き奮闘しながらも、時代を楽しむ姿が好き」と魅力を話す。
なぜ、戦国時代が女性を引きつけるのか。歴史関連イベント企画業「六龍堂」代表、早川知佐さん(30)は「ゲームソフトの影響が大きい」と指摘。「武将になって戦場で戦うアクションゲームソフト『戦国BASARA』や『戦国無双』が女性にも人気で、はまるようだ」と話す。
登場人物の声優のファンになるほか、歴史上の武将が美形に描かれ、史実ではありえない武将同士が戦うなどゲームならではの面白さも理由だという。
ゲームにはまった女性たちは、お気に入りの武将の関連グッズや本にも関心を持ち始める。
書籍のほか戦国グッズも扱う東京・神田小川町の「歴史時代書房 時代屋」は毎週末、若い女性でいっぱい。来店していた東京都大田区の会社員、佐々木千絵美さん(22)は「戦国武将は潔く、男気があるのであこがれる」。角英憲店長(34)は「家紋入りタオルなどオリジナルグッズの10月の売り上げは前年の1・3倍。武将をテーマにした本の売り上げもアップしている」。
ファッションにも戦国ブームが及ぶ。今年8月、東京・原宿に開店した戦国グッズ店「もののふb6丸」では、戦国武将の漫画が描かれたTシャツやジャケット、家紋入りアクセサリーなどが人気。田中秀樹店長(36)は「若い女性客が全体の6割」という。
11月11日に東京・有明の「東京ビッグサイト」で開かれた戦国時代関連の同人誌即売会には全国から8000人が集まった。主催者によると、7割が女性で、武将になりきったコスプレ姿の若い女性も多かったという。
こうした女性たちの戦国ブームについて、精神科医の香山リカさんは「戦国武将に理想の男性像を追い求めている。ブームは時代が求めるもの。女性という立場にとらわれず、やりたいことがやれたらどんなに爽快(そうかい)かという気持ちを武将に映し出そうとしているのでは」と話している。
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