来年はどちらを向く？　「反小泉」の羅針盤
政治部・亀真奈文（５月29日）

　衆参合わせて所属議員７人の国民新党。綿貫民輔代表、亀井静香代表代行が「党の顔」として並び立ち、「郵政造反ベテラン議員によるミニ自民党」の印象がある。だが１人の新人議員に光を当てると、来年夏の参院選に向け、国民新党が野党協力の重要な「役者」となる可能性もみえてくる。

　実は、国会審議の場での国民新党の「顔」は、綿貫、亀井両氏ではない。昨年９月の衆院選で初当選した糸川正晃衆院議員だ。新人ながら副幹事長を務め、衆院で６つの委員会に所属する。

　小学校から慶応で学んだ糸川氏は大学卒業後、投資顧問会社を自ら立ち上げた。ファイナンシャルプランナーとして自衛隊員の生活設計に当たる仕事を通じ、知り合ったのが自衛官出身の田村秀昭参院議員。田村氏は当時、民主党に所属し、小沢一郎氏の側近だった。

　糸川氏の運命を大きく変えたのが、郵政民営化法案の対立が引き金になった突然の衆院解散。綿貫氏らは自民党を離党して国民新党を立ち上げ、田村氏も民主から合流した。そんな縁から綿貫氏の地元で、当選の可能性の高い比例北陸信越ブロックの候補として、糸川氏に白羽の矢が立った。

　「我々は反自民ではなく反小泉」。綿貫氏以下、国民新党の現在の統一見解である。自民党、民主党のどちらにつくか……。来夏の参院選で自民、民主両党がわずかの差となった場合、国民新党がキャスティングボードを握る余地が生まれる。同党としては９月の自民総裁選の動向を見極める構えだが、現時点での綿貫氏ら幹部の意向は糸川氏の行動にやや表れている。民主党への静かな接近だ。

　小沢代表の下、民主党の蘇生（そせい）ぶりを印象付けた４月の衆院千葉７区補選。民主党の鳩山由紀夫幹事長からの応援要請を受けた綿貫氏は、投票日前日に糸川氏を選挙区に派遣し民主党候補を応援させた。綿貫氏がみずから入ると、あらぬ憶測を呼びかねない。補選翌日の４月24日、綿貫氏と鳩山氏との会食に糸川氏を同席させてもいる。話題は参院選を見据えての両党の連携にまで及んだ。パイプ役としての糸川氏に期待がかかる。

　民主党は小沢代表の誕生によって一段と「保守政党」の顔つきが強まった。国民新党と民主党は政策的に違和感がほとんどないうえ、もともと人的関係も深い。綿貫氏と小沢氏は「同期の桜」。民主党の鳩山グループは自民離党組と郵政民営化法案反対で共闘した縁もある。鳩山氏側近の大畠章宏衆院議員は、綿貫氏が会長を務める日本カナダ友好議員連盟で交流を重ね、国民新党との窓口役になっている。

　ただ、こうしたつながりが一気呵成（かせい）に両党の共闘に発展するかといえば、なお疑問は残る。５月の大型連休中、軽井沢のホテルで鳩山グループは研修会を開いた。糸川氏も「目玉ゲスト」として出席する予定だったが、「地元支援者との会合」のため急きょキャンセルになった。

　その１週間ほど前に民主党の渡部恒三国会対策委員長が「民主党と国民新党は、いずれ１つになれる」と発言。「解党→合流」説が一部で飛び交い、国民新党側が慎重になったのが実情だ。

　４月に開かれた国民新党のパーティー。綿貫氏はあいさつで「じ、じ…国民新党の綿貫民輔です」と「自民党」と言いかけて会場の笑いを誘った。綿貫氏は「国民新党は自民、民主の間のキャスチングボートだ。両党が過半数を取れなければ、国民新党が日本の政治の羅針盤になれる」と公言する。小沢氏や渡部氏との連絡を絶やさず、富山や島根など参院選１人区での協力の可能性を残すのも、そんな思惑を秘めてのことだ。

　綿貫氏は「９月の自民党総裁選で小泉路線がどう変わるのか。よく見ないといけない」と語っており、自民党との“復縁カード”も捨てきったわけではない。綿貫氏らの思惑を読み解き、国民新党の進路を占うには、新人・糸川氏の動きが隠れた先行指標となるかもしれない。

香川で不明の女性、山中で遺体発見…暴力団組員ら２人逮捕
　香川県観音寺市で無職曽根岸江さん（５５）が行方不明になり、自宅から大量の血痕が見つかる事件があり、観音寺署は、同県丸亀市福島町、山口組系暴力団員永岡秀明（３６）、観音寺市八幡町、スナック経営真鍋泰光（４７）両容疑者を死体遺棄容疑で逮捕、２人の供述から２０日、観音寺市内の山中で曽根さんの遺体を発見した。

「加ト吉」元常務宅など捜索、循環取引問題で
　冷凍食品大手「加ト吉」（本社・香川県観音寺市）グループが約１０００億円の売り上げを水増しした循環取引で、香川県警は１２日、取引を主導したとされる同社の高須稔・元常務（６８）の自宅と香川県の貿易会社「元光」の関係先などを有印私文書偽造容疑で一斉捜索に着手した。

　今年３月の不正発覚後、初の強制捜査で、捜索は５道府県の二十数か所の見込み。加ト吉は一連の問題で１７２億円の特別損失を出しており、県警は観音寺署に捜査本部を設置し、会社法の特別背任罪の適用も視野に捜査する。

　捜索容疑は、加ト吉子会社「加ト吉水産」（観音寺市）の社印、代表取締役印をゴム印などを使って偽造し、２００６年８月〜同１１月の間、大阪市中央区の中堅商社「茶谷産業」から健康食品など計３８億円を購入したとする加ト吉水産の売買契約書など四十数枚に押印した疑い。

　茶谷産業から、この３８億円の売り掛け債権を買い取ったみずほ銀行側が、「取引そのものが存在しない」と主張する加ト吉水産を相手取り、代金の支払いを求める民事訴訟を今年６月、大阪地裁に起こしている。

　加ト吉グループと茶谷産業を巡る取引は、循環取引の１ルート。茶谷産業は、加ト吉水産に販売する商品を伝票上、加ト吉や、加ト吉が出資する水産物卸業「スリースターインターナショナル」（大阪市中央区）、元光などから仕入れていたことが新たに判明。その際の売買契約書には、加ト吉の正規印が使われていたとみられる。

（2007年11月12日12時12分 読売新聞）