病める米国医療、無保険者の悲鳴

病院が医療費債務を売却、金融機関が厳しく取り立て

  • 2007年12月3日 月曜日

 業界団体の米国病院協会は、問題となっている手法は「未調査」としながらも、「非営利病院は減税措置に見合う十分な地域サービスを提供している」と繰り返した。

 この新分野を開拓してきたHELPファイナンシャルは、単に医療事業が円滑に進むようにしているだけだと主張する。ミシガン州プリマスに本社を構えるHELPは株式非公開企業であり、社名のHELPは“入院費用貸付制度(Hospital Expense Loan Program)”の略だという。

 全米100の病院を顧客とし、これまで3億ドル近くを取り扱った。割引価格で債権を買い取った後、患者には1〜5年の返済期間で10〜18%の利息を請求する。「病院は医療事業に集中したいのであって、金融業をやりたいわけではないのだ」と、HELP副社長スティーブ・ポサ氏は言う。

突きつけられる支払いの選択肢

 レディックという夫妻が仕方なくHELPと契約したのは、今年初めのことだ。後になって、負債額6293ドルに14.5%もの利息が上乗せされていることを知ることになった…。

 今年1月、妻のミア・レディックさん(36歳)は軽い発作を起こしてサティラ地域医療センター(ジョージア州ウェイクロス)に運び込まれた。検査の結果、先天的な心臓疾患で心臓に小さい穴が開いており、いずれは外科手術が必要と分かった。

 ミアさんは薬局勤務、夫のジェイスさんはジョージア州の職業訓練指導員で、年収は合わせて9万ドル。幼い子供が2人いる。2005年にジェイスさんが独立して業務を請け負うようになったため、夫妻は州の保険を外れた。以来、高額な民間保険に加入する代わりに貯蓄に回してきた。

 そんな状況で、ミアさんの発作が起きた。救急医療費と検査費の6293ドルは、無利息の分割払いができると思っていた。地元出身のミアさん一家は、ずっとサティラ医療センターによる無利息分割払いを利用してきたからだ。「いつもそうしてきたのよ」とミアさんは言う。

 ところが、ミアさんが緊急治療室に運び込まれた朝、医療事務担当者から従来の支払いプランはなくなったと知らされた。気が動転していた夫のジェイスさんは、その日は支払いの話はしたくないと告げた。

 翌週の話し合いの席で、夫妻は2つの支払い方法を提示された。90日以内に医療費を支払って15%の割引を受けるか、HELPから資金を都合するかだ。十分な蓄えがなかった夫妻はHELPの利用を選択した。

 ミアさんの病気のことが気になっていた夫妻は、利息がかかるのかどうか聞き忘れていた。3月に届いた請求書には14.5%の利息が加算されていた。つまり月々の支払い額は148ドルになる。ミアさんが2月に別の病院で受けた外科手術の2万4000ドルと合わせ、「借金が多すぎて首が回らない」とジェイスは嘆く。

医療保険料をケチった患者側が悪い?

 ジョージア州南部の農村地帯には無保険者が多い。2002年にHELPと提携したのは、その不良債権を減らすためだったとサティラ医療センターの幹部は言う。10月中にHELPに売却した医療債権は71万8000ドルに上る。売却価格は1ドルにつき92セント。もっと割り引いて売却すれば、HELPの利息(14.5%に設定された)を引き下げることもできたが、そうはしなかった。サティラ医療センターで未収金管理を担当するブレンダ・ウィリアムソン氏は言う。

 サティラ医療センターの患者向け金融サービスマネジャーを務めるバーバラ・G・アルバート氏は、「割引が適用される90日以内の支払いプランを提案したのに、レディック夫妻がそれを拒否したのだ」と強調する。

 無保険者による医療費滞納の増加に伴い、サティラ医療センターはHELPに頼らざるを得ないという。サティラのCFO、カトリーナ・ウィーラー氏は、「歯医者や獣医ではお金を支払うのに、どうして普通の病院にかかった時には払わなくていいのか」と言う。HELPのポサ氏は、「適切な利息を設定するのはサティラ医療センターをはじめとする各病院だ。どの程度を適切と見るかはそれぞれだ」と説明した。

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