病める米国医療、無保険者の悲鳴病院が医療費債務を売却、金融機関が厳しく取り立てGEマネーは既に債権の価格として約6300ドルをヒルサイドに支払っていた。ケアクレジットに電話して請求に異議を唱えたが、請求書の送付は止まらなかった。数週間後に再度電話し、書面でも異議を申し立てた。ところがGEマネーの言い分は「既に60日の異議申し立て期間を過ぎており、債務を逃れることはできない」というものだった。 ケアクレジットカードには、初めのうちは利息ゼロの特別利率が設定されて。しかし、ディルツさんが初回の支払いを怠ったということで、いきなり年率26.99%にまで跳ね上がった。 2006年8月、GEマネーはディルツさんをクイーンズ区の州裁判所に訴えた。ディルツさんはセント・ジョーンズ大学法科大学院の非営利組織「高齢者法律クリニック」に相談し、問題の債務に異議を申し立てた。その時点で債務額は1万175ドルに達していた。 「GEから郵便物が届くたびに身が縮む思いだったのよ」とディルツさんは振り返る。夫妻はディルツさんのパートと社会保障給付による年間1万8000ドルの収入で生計を立てている。「毎日毎日が神経にこたえたわ」。
BusinessWeek誌の取材で態度を転換GEの広報担当者クリスティー・F・ウイリアムズ氏は電子メールで、「ケアクレジットカードは、600万人の利用者の大半からご満足いただいています」と述べている。ディルツさんの件に関しては、「異議申し立て書を送付し、異議申し立て手続きについて何度も話し合いましたが、ディルツ氏からは数カ月間ご連絡いただけませんでした」と主張している。 だが、BusinessWeek誌が問い合わせた後の11月12日、GEは姿勢の見直しを表明した。ウイリアムズ氏によると、同社はディルツさんの債務を帳消しにすると共にクレジットリポート(信用報告書)の当該債務の記録も抹消する意向だという。自発的にディルツさんの債務を見直したのだとウイリアムズ氏は説明する。「ディルツ氏の事情にもっと配慮すべきでした」。 ディルツさんの弁護人ジーナ・カラブレーゼ氏は、記者からの問い合わせがなかったらGEが姿勢を転換したかどうかは疑わしいと言う。「GEはほぼ1年前からこれらの事実をすべて認識していた。正当な根拠がありながら法律家の後ろ盾を持たない人がどうなっているか考えてみてほしい」(カラブレーゼ氏)。 ヒルサイドの歯科医モフタル氏とスタッフはコメントを拒否した。
クレジットカードへの加入を強制する病院BusinessWeek誌の取材によってGEが事実を認めたのは、この例だけではない。無保険の患者らにケアクレジットカードを利用するようクリニック側が強く促していたケースがあった。 ドーン・シェリーさん(33歳)は2003年末、鼻炎治療のためにクリスティー・クリニック(イリノイ州アーバナ)を訪れた。治療費は90ドルだった。だが、現金で支払う余裕がないとクリニックのスタッフに打ち明けた。スクールバスの添乗員をパートで勤めて手にする時給7ドル50セントの稼ぎしか収入がなく、保険に入っていなかった。 クリニックからは、ケアクレジットに申し込むしか選択肢はないと言われた。シェリーさんは、保険と似たようなプランで自己負担は少なくて済むのだろうと思ったという。「本当はクレジットカードだと分かっていたら、絶対に署名しなかったのに」とシェリーさんは悔しがる。 シェリーさんの負債残高はその後膨れ上がった。同クリニックに何度か通ったほか、緊急治療室で別のクリニックの医師から手当てを受けたからだ。現在は失業中で支払いをきちんとできない。10月24日付けの督促状によると、ケアクレジットへの負債総額は3485ドルに達している。そのうちのかなりの部分は延滞料と26.99%の利子によるものだ。 クリスティー・クリニックは最近まで、全額一括払いの困難な患者は「ケアクレジットへの加入が必要」との文言をウェブサイトに掲載していた。この件についてBusinessWeek誌がGEに問い合わせると、事態の改善に努めるとの回答があった。 「同クリニックに対しては、その記述を削除し、ケアクレジットへの加入を勧める方針を改めるよう促している。シェリー氏への請求書からすべての手数料と利息をカットし、ケアクレジットの利用を求められた患者の懸念の解消に努めていく」(ウィリアムズ氏)
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