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低所得者増とモラル低下で治療費未収14億円/県内23自治体病院
- 政治・行政
- 2007/12/03
県内の自治体病院(二十三施設)で患者が一年以上支払っていない治療費(未収金)が三月末時点で計十四億千九百八十五万円に上ることが、神奈川新聞社の調査で二日、分かった。患者負担の引き上げや格差の拡大を背景に低所得者が支払えなくなったのが主因だが、最近は正当な理由もなく支払いを拒む患者も目立つ。ほとんどの病院で未収金が増加傾向で、経営を圧迫すると危機感を募らせている。
調査は病院を運営する県と十市に行い、二〇〇六年度決算で一年以上未収だった患者負担分の治療費を調べた。
それによると、一病院当たりの平均未収金は六千百七十三万円。病床数が多い病院ほど多く、横浜市立市民や川崎市立川崎、大和市立など六病院は一億円を超えていた。県立九施設の中では、足柄上病院の四千四十四万円が最多だった。
治療費の未収は全国的な問題だが、中でも公的な病院の未収額が膨らむ傾向がある。「民間病院と比べ、負担の引き上げで支払いが困難になる低所得の患者が多い」(厚木市)ためだ。県も「患者負担が二割から三割になった〇三年四月以降、年間の未収金が計二千万~三千万円に増えた」と説明する。
また、不況や格差の拡大が招いた状況として「失業や自己破産で払えないと患者に告げられる」(横須賀市)、「健康保険に未加入や保険料の未納の患者や外国人が目立つ」(平塚市)などがある。茅ケ崎市は十一月、未収金を回収するため約百人の患者を一斉に戸別訪問したが、「七~八割が生活が苦しい状況だった」という。一括で払えない年金生活のお年寄りが毎月千円ずつ分納する例も少なくない。
そうした一方で、主に出産や救急で「払わない患者」が急増。診療内容や医師の対応が不満だと支払いを拒んだり、他人の保険証で受診し請求を免れる患者もいる。「払えない患者の方が多いが、払わない患者は一人当たりの未収額が多い」(小田原市)だけに、悩みの種になっている。
〇五年十一月の最高裁判決で、公立病院の診療債権の時効が五年から三年に短縮されたのに伴い、未収金の欠損処理を凍結していた影響もあるという。
どの病院も、未払い患者宅への訪問徴収やコンビニエンスストアでの収納、会計窓口の時間延長など対策に工夫を凝らすが、未収金解消への道筋はみえない。簡裁の支払い督促に着手したり、債権回収会社の活用や入院費の一部前払いを検討する動きも広がりつつある。
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