夕焼け描いた絵画を分析、温暖化研究に活用へ
2007.12.02
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20:00
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- AP
ロンドン(AP) 英風景画の巨匠、J・M・W・ターナー(1775‐1851)が描いた色鮮やかな夕焼け空は、気候変動研究の手掛かりになるか?――ギリシャの科学者らがこのほど、古今東西の日没の風景画の色彩を分析したユニークな研究結果を発表した。
国立アテネ天文台のチームは、過去の気候変動を詳しく調べることによって、将来を予測するコンピューター・モデルの精度を上げるプロジェクトに取り組んでいる。このほど大気化学・物理学の専門誌に報告した研究では、181人の画家による風景画554点について、夕焼けの色の「赤さ」を数量化し、その傾向を調べた。チームによれば、「気候変動を知る手掛かりとして芸術作品を使った研究は、これが初めて」という。
チームでは特に、大きな火山噴火が起きた年代に注目した。1883年にインドネシアのクラカタウ火山が大噴火を起こした際、世界各地で真っ赤な夕焼けが観測されたとの記録などから、噴出ガスによる大気汚染の度合いが大きいほど、夕焼け空は赤くなると考えられる。そこで、火山噴火後3年以内に描かれたターナーら19人の画家による作品54点を、「火山グループ」と名付け、残りのグループと比較した。それぞれの作品中に使われた赤と緑の割合を調べたところ、火山グループの方が圧倒的に赤の割合が大きかったという。チームは、「画家たちは驚くほどの正確さで、実際の空の色を再現している」と述べ、「過去数世紀にわたる環境汚染の状況を調べる手段として、風景画が有用であることが分かった」と結論付けている。
芸術作品を科学的研究に利用することに対しては、「風景画が目指すのは自然を正確に記録することではない」(米国立大気研究センターのケビン・トレンバース所長)、「画家の解釈を事実として過大評価するのは危険」(英バーミンガム大のターナー研究家、ジェームズ・ハミルトン氏)など、批判の声も上がっている。一方で、バーミンガム大で気象学を研究するジョン・ソーン教授は、「特定の画家の作品だけでなく、幅広い対象を扱った研究なので、平均値として活用できる」との評価を示している。