野党が全会一致の慣例を破り参院財政金融委員会で単独議決した額賀福志郎財務相らの証人喚問が見送りになった。参院第一党の民主党が強硬姿勢で主導したが腰砕けした形だ。
収賄容疑で逮捕された前防衛事務次官の守屋武昌容疑者が、逮捕前の参院外交防衛委員会の証人喚問で、贈賄側の防衛商社「山田洋行」元専務との宴席に同席した政治家として元防衛庁長官だった額賀氏らの名前を挙げた。額賀氏は「全く記憶にない」と強く否定していた。
深い闇に包まれた防衛利権に政治家がかかわっていたとなると重大な問題だ。政官業の癒着は決して許されず、真相の解明に尽くすのは国会の責任だ。
額賀氏は同席を認めず、自民党も、額賀氏が家族らとの夕食会で撮影した日付と時刻入りの写真や、その後に出席した勉強会の録音記録などを提示し、宴席に同席したことはあり得ないと物証で反論した。民主党は、電話で得た守屋氏の証言を根拠に、自民党の主張を「アリバイ作りの感触」と批判し、対決色を強めていた。
民主党は、額賀氏と守屋氏を一緒に証人喚問することでどちらが虚偽の発言をしているかはっきりさせる狙いがあったのだろう。与党は反対したが、三日に喚問を行う日程を野党単独で議決した。参院事務局によると、衆院議員が衆院での喚問を受けないまま参院で喚問される例は一九五五年の国会法改正以来なく、額賀氏が初めてになるとみられていた。
守屋氏の逮捕によって、二人同時の喚問は不可能になった。さらに、共産党などが野党単独で議決した喚問の強行に、慎重になった。多数決で喚問が決まるようになれば、与党が多数を占める衆院で報復的な事態が起きかねない。国会の権威は失墜しよう。
江田五月参院議長のあっせんによって、自民、民主、公明三党の参院議員会長が江田氏も同席して会談し、喚問見送りで合意した。実施されていれば衆参両院で喚問合戦の泥仕合も予想されていただけに、見送りは妥当な結論であろう。
額賀氏は閣僚であり、野党が国会の委員会で宴席問題を問いただすことは可能だ。喚問が見送りになっても事実を明らかにする努力を怠ってはならない。
残念なのは、民主党に強引さが目立ち、額賀氏の宴席問題を政争の具にしてしまったことだ。参院第一党の数の力におぼれたといわれても仕方がなかろう。期待された説得力ある政策論争を聞かせてもらいたい。
けがで夏巡業に不参加を届けながらモンゴルでサッカーに興じたとして日本相撲協会から謹慎処分を受けて母国で療養していた横綱朝青龍が、約三カ月ぶりに再来日し、初めて公の場で謝罪した。
朝青龍は「長い間、大変なご迷惑を掛けたことを心からおわび申し上げます」「相撲は大好きなのでもう一度やり直そうと思った」などと述べて頭を下げた。その後、横綱審議委員会でも謝罪した。
これで七月末から続いた騒動に一応の区切りがついたといえよう。反省を忘れることなく、けいこに精進し汚名を返上してほしい。
これほどに厳しい批判を受けた背景には、それまでの朝青龍の横綱らしからぬふるまいに問題があったからだ。今後もファンから厳しい目が向けられていることを認識しておくべきだろう。
朝青龍の不祥事は、一人の外国人横綱の軽率な行動というだけではすまされない問題である。指導できなかった親方の責任は重いが、傍観していた日本相撲協会にも反省点が多いはずだ。
日本人の新弟子希望者が少なくなる一方で、外国人力士はどんどん増えている。力士教育の在り方が、このままでよいはずがない。横綱審議会の委員からは、親方教育の必要性も指摘されている。
時津風部屋の力士死亡事件では、相撲協会の旧態依然とした閉鎖的体質に厳しい声が上がった。力士出身の親方だけの閉鎖的な運営も改める必要がある。
九州場所では、満員御礼が出たのは三日間だけだった。土俵が盛り上がりに欠けたことが原因である。心技体そろった品格ある力士を育てていくことで大相撲の魅力アップにつなげねばならない。
(2007年12月2日掲載)