2007年12月3日(月)
◎○ 主張変更の是非は〜コメンテーターの意見
J−CASTによると、福岡の橋上でひき逃げされ車両が海中に落下し児童が死亡した事件で、「被害者車両が居眠り運転していた」と弁護側の主張が変更されたことにつき、議論が生じたそうです。
が、主張の変更の是非については、被告人の同意があり証拠もあればよいが、光市事件ではそれらがなく弁護人が創作して誘導しているからダメ、という論調のようです。
彼らは、光市事件現弁護団の主張に沿う証拠がどの程度どんな内容があり、被告人が1審以来公判で何をどのように言っているのか、あたかも全部見てきたかのように断定しています。
しかも、証拠があり被告人の主張があっても(正当な主張であっても)、被害感情に配慮し主張を控えるべきとも読めます。仮に被害者に落ち度があると考える場合であっても、量刑のために土下座弁護を選択すべし、ということでしょうか。
刑事弁護全般へは後押しになるようなコメントですが。
ヤメ検の有利性も持たずに、厳しい事件の刑事弁護でギリギリの戦略と戦術を現場で実践してきた弁護人からは、とてもでそうにないコメントです。
正直、安田先生はキライですが、尊敬には値します。
【以下引用】
テレビ番組のコメンテーターで元検事の大澤孝征弁護士は、J-CASTニュースの取材に対し、弁護側にある程度の理解を示した。
「光市の母子殺害のケースは、弁護側が被告を誘導したとしか思えません。あれは例外です。今回のひき逃げ事件の場合は、証拠があり、被告が同意しているなら、弁護の方針として仕方がありません。被告を守るために、弁護士はあらゆる主張をする義務があるからです」
ただ、方針変更の内容については、疑問を示した。
「後ろから車をぶつけたのは、加害者の問題です。被害者にも責任があるという論法は、被害感情に悪影響を及ぼし、量刑にも響きますので、私はいい結果になるとは思いません。不合理な主張をする場合もそうです」
刑法に詳しい日大大学院法務研究科の板倉宏教授は、J-CASTニュースに対し、次のように答えた。
「弁護側は、居眠りをしていたと指摘することで、被告が危険運転致死傷罪に当たらないことを主張しているのだと思います。方針転換は、珍しいことではありません。普通の人から見ると妥当とは思えないでしょうが、弁護側がそういう主張をしただけでは不当だとは言えません。光市のケースは、妥当性を欠いており、事実を曲げるような主張はいけない。とはいえ、今回のひき逃げ裁判でも、あまり主張をコロコロ変えるようでは、裁判官に信用されなくなるでしょう」