五十七の国・地域の十五歳を対象にした学力調査で、日本の生徒の科学応用力が二位から六位に低下した、と報じられた 困ったものだ、とマユをしかめて対策を急がねばならないのだろう。学力優秀な官僚や識者がいなければ国は危うい。が、まれに落ちこぼれから天才や偉人が出ることもある 確かなのは、点数や○×だけでは見えないものが、いくらもあるということである。作家の司馬遼太郎さんに取材した折、北陸の豊かな文化土壌が生んだ人材として、司馬さんは二人の画家と一人の作家の名を挙げた。メモをとる手が思わず止まった。「そうか、北陸の人じゃなかったか」、気配を察して司馬さんはそう言葉を継いだ。博学の人でも勘違いがあり、それを繕うことなく認めたことに、親しみのようなものを覚えた 政府の教育再生会議が学生の学力低下を心配し、受験資格となる「高卒学力テスト」導入を打ち出した。大学へ入るため、二度も三度も試験を課そうという話である ガリ勉大好きの有識者や官僚らしい発想である。が、自分がそうだからといって、他人にもガリ勉を押しつけるのは、余計なお世話である。
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