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独断流:後悔と反省、信じたい /宮城

 「私が薬を売って借金を返せば、両親が愛してくれると思った」。9月の仙台地裁。インターネットで向精神薬「リタリン」を乱売した札幌市の無職女(25)は、初公判の法廷で涙を流し、「両親の借金返済」が動機だったと語った。

 乱用が社会問題化しているリタリン。難治性うつ病やナルコレプシー(睡眠障害)の治療に使用されてきたが、依存性が高く、妄想や幻覚などの副作用から「合法覚せい剤」とも呼ばれる。

 乱用の背景には、医療機関によるずさんな処方がある。11月に警視庁の強制捜査を受けたクリニックは、電話で「リタリンが欲しい」と依頼されるだけで処方せんを郵送していたというからあきれてしまう。

 厚生労働省は10月、うつ病を適応症から除外し、処方できる医療機関や医師を限定することを決めた。乱用に歯止めをかける施策として評価できる。真に患者のためを思い、服用量や服用期間を厳格に守らせる医師のみが処方すべきだ。

 いくら金銭的に困っていたとしても、自殺者まで出した危険な薬をばらまく行為は許されない。裁判官は「乱用が社会問題化する中で、害悪を拡散させた」と厳しく指摘したうえで、執行猶予付きの判決を言い渡した。

 3回の公判すべてを傍聴した。「多くの人に迷惑をかけて申しわけないと思っている」。彼女の消え入りそうな声と、両親への思いを聞き、私は彼女の後悔と反省を信じたいと思った。

 「もう二度と同じ間違いはしません」。その言葉が本当であってほしいと願わずにはいられない。ネットを通じて彼女からこの薬を買った多くの人にも、同じように誓ってほしい。【鈴木一也】

毎日新聞 2007年12月2日

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