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「捕虜になったら自決せよ」〜元「731部隊」隊員が講演 |
2007/06/07 |
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6月3日、神奈川県小田原市内の本立寺で、旧日本軍「731部隊」の少年隊員だった千葉県在住の篠塚良雄さん(83歳)の、「悪魔の手先の日々」と題した講演会(主催:撫順の奇蹟を受け継ぐ会・湘南支部)が開かれ、約120人が参加した。当日は「731」のパネルも展示され、参加者が熱心に見入っていた。
篠塚さんは15歳だった1939(昭和14)年2月、友人に誘われ仲間3人と、何も分からないまま、石井部隊の少年隊員に応募し合格。配属先はハルピンの「平房」。そこは言うまでもなく生体解剖、人体実験など数々の悪事を犯した「731・石井部隊」であった。 |

会場の本立寺
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廊下に展示されたパネル
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中帰連・千葉支部建立の『中帰連碑』(謝罪碑)
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講演する篠塚良雄さん
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庫裏を埋めた参加者
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パネルに見入る参加者
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現地に到着し、最初に目にしたのは巨大な煙突(後で、生体解剖後の死体を始末する「焼却炉」と知る)と、通常あるはずの「部隊名」の表記が無く、入り口に「関東軍司令官の許可なき者は何人といえども立ち入りを禁止する」と書かれた立て看板だったという。
最初に受けた教育は「見るな!聞くな!話すな!」という指示であり、現地は特別軍事地域で飛行機も上空を飛べず、逃げ出せば敵前逃亡として処刑されることなどを、徹底的に叩き込まれた。ノモンハン事件(1939年5月〜9月。日本陸軍とソ連軍が交戦、日本軍は壊滅的敗北を喫した)の時、篠塚さんは前線まで石油缶に入れた細菌を運び、その功績で叙勲を受けた。その後もネズミや蚤、ペスト菌の増殖、大量生産に関与したと証言した。
終戦直後、篠塚さんは「731部隊」の上官から捕虜になったら自決せよ、と青酸カリを渡されたが、藤田参謀長の命令で国民党軍に加わった。八路軍と戦い、「通化事件」で捕虜となり、収監された。その後、回帰熱にかかって数ヵ月間意識不明になったが、中国人民解放軍の手当で一命を取りとめ、以後、解放軍衛生部に属し、行動した。
中華人民共和国建国後の52年、「731部隊」での自らの罪業を自首、告白、認罪し、戦犯として「撫順戦犯管理所」に収容された。56年の軍事裁判で「起訴免除」の寛大措置で釈放されて帰国の後、「中国帰還者連絡会(中帰連)」に参加、自らの罪業を告白・証言しながら、現在まで反戦平和と日中友好の運動に参加してきた。
この集会は、02年に「中帰連」の解散と同時に設立された「撫順の奇蹟を受け継ぐ会(略称 受け継ぐ会)」の湘南支部設立総会の「記念講演」として開催された。当日20名の会員で「受け継ぐ会・湘南支部」が正式に発足した。この「受け継ぐ会」は現在、北海道から九州まで12支部が活動している。
篠塚さんが所属していた「中帰連・千葉支部」は匝瑳(そうさ)市のお寺の境内に、黒御影石の立派な「中帰連碑(謝罪碑)」を97年に建立(写真参照)している。2000年の「女性国際戦犯法廷」で性暴力の加害証言をした2人の元日本兵も、この「中帰連」の会員だ。しかし、NHKがこの加害証言と元慰安婦の皆さんの被害証言、そして、天皇有罪部分を「カット」して放送したため主催者から提訴され、先日、NHKは東京高裁で敗訴し、上告している。
《記者私見》
私もこの「受け継ぐ会」の会員だが、会場を提供したのはお寺、集会の司会は神父さんという組み合わせだった。これは素晴らしい。平和を求めるのに宗派も政党も関係ない。本来、宗教と教育は理想社会を目指す素晴らしいものだが、その扱いを間違えると、とんでもない結果になる。これは歴史が証明している。しかし、既に教育現場は「愛国心、日の丸」を強制されている。戦前回帰へ一直線に進む動きに、危機を感じる。
戦争被害を抵抗なく話す人は、少なくない。しかし、相手の立場を考え、自らの加害を証言し、懺悔・反省することは容易ではない。「中帰連」の皆さんのその勇気に脱帽している。しかし、そのキッカケを作った「撫順戦犯管理所」で何があったのか?関心のある方は、是非、調べていただきたいと思う。
周恩来は、日中の国交回復前に「民間貿易」と言う形で、そのレールを敷いた岡崎嘉平太(元・全日空社長)に、「私たちは日本を強く恨んでいますが、忘れようと努力をしています」(NHKスペシャル「命をかけた日中友好・岡崎嘉平太」07.3.19)と語っている。ならば、加害国・日本はその加害の歴史を「忘れない努力」を続ける義務がある。しかし、日本政府は加害に蓋をしようと、次々に教科書から加害の事実を抹消している。私たちは、この「現実の危機」を、しっかり理解し受け止めなくてはならい。
参考資料:
・『季刊中帰連』
・『日本にも戦争があった。七三一部隊元少年隊員の告白』、篠塚良雄・高柳美津子著、新日本出版
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(芹沢昇雄)
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