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がん遺伝子なしで万能細胞作製 京大チーム、応用に一歩

2007年12月01日08時02分

 体の細胞から万能細胞(iPS細胞)をつくる際に使う「がん関連遺伝子」なしでも万能細胞をつくることに、京都大・再生医科学研究所の山中伸弥教授らが成功した。この万能細胞をもとに生まれたマウスを育ててもがんにならないことを確認。同じ方法で人の万能細胞もつくったという。同グループは先月、世界で初めての人のiPS細胞づくりを公表したばかりだが、臨床応用に向け課題といわれた安全性の問題を一つ解消したことになる。1日発行の米科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー(電子版)に発表する。

 山中教授らは、皮膚の細胞に四つの遺伝子を組み込み、万能細胞をつくる手法を確立した。ただ、がん発生にかかわるとされる遺伝子c―Mycを含んでいた。この手法でつくった万能細胞をもとに生まれたマウスでは2割に腫瘍(しゅよう)ができた。

 今回、c―Mycを除いた残りの3遺伝子だけを皮膚細胞に入れる実験を実施。培養条件を見直し、新しい万能細胞をつくった。この万能細胞を使って生まれたマウス26匹を100日間育てたが、1匹もがんにならなかった。一方、c―Mycを含む場合では、37匹中6匹にがんができた。

 ただ、今回の手法でも安全性の問題が解決されたわけではない。山中教授は「皮膚の細胞に遺伝子を送り込むのにウイルスを使うので、がんを引き起こす可能性は残っている」と話している。

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