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エイズと向き合う:ウガンダ報告/中 停滞する投薬治療

 ◇現地工場が「突破口」に

 「ここにしか頼れない」。エイズウイルス(HIV)に感染した女性、ビロンド・ノラさん(35)は毛布をかぶって震えていた。ウガンダの首都カンパラ郊外にあるHIV感染者支援の非政府組織「TASO」の医療施設。ノラさんは遠く離れた家から月に2度訪れ、発症を遅らせる抗レトロウイルス(ARV)薬を受け取る。ノラさんは風邪をこじらせ熱がある。「薬は高く、苦しい生活を考えるとここでしか手に入らない。小さな病も怖い」と弱々しく話す。

 TASOは、エイズ対策ではアフリカ最大の非政府組織で、医療施設などを運営する。ARV薬導入にもいち早く取り組んだ。チャウスさん(45)もARV薬治療を受ける。「これで前向きに生きられる」と話す。

 ところが、ARV薬治療は広がりを見せず停滞している。国連機関などの報告では、サハラ砂漠以南のアフリカで感染者の約3分の1がARV薬治療を2年以内で中断した。ウガンダでは投薬が必要で受けていない人が最大20万人にのぼる。

 背景には、ARV薬治療の経済的負担や複雑さがある。治療では3種の錠剤の同時服用を一生継続する必要があり、不規則な服用は薬の効果を弱める。薬は強く栄養不足での服用は逆に副作用をもたらす。食糧難とエイズ禍が重なる地域での定着も難しい。そして価格は依然、高い。

 今年10月、カンパラ郊外でムセベニ大統領らが出席し、アフリカ初のARV薬製造工場の完成記念式典が行われた。大統領は「ARV薬をこの工場から購入し病院に供給する」と宣言した。アフリカ諸国ではARV薬が効果を上げることがわかっていながら供給態勢の確立が遅れ「感染者が見殺しにされた」との批判が根強い。先進諸国が「延命策に過ぎない」と援助を渋る事情もある。

 困難を克服する手段が、自国でのARV薬生産だ。ウガンダでは来年初めにも月約15ドルと比較的安価にARV薬を販売、周辺国への輸出も期待される。国際家族計画連盟のジル・グリア事務局長は「アフリカ人のためにアフリカ製の薬が供給される。新たな突破口だ」と話す。【カンパラで高尾具成】

毎日新聞 2007年11月30日 東京夕刊

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