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エイズと向き合う:ウガンダ報告/上 「禁欲」裏目、増える感染

 ◇影落とす米の宗教観

 夕暮れ、春をひさぐ女性が坂道を駆け降りる。湿った赤土がハイヒールに跳ね上がる。ウガンダの首都カンパラ。売春宿が集まるカウェンペ地区近くの小屋に、オレンジ色のジャンパー姿の女性ら約50人が集まった。売春婦の自助グループ「ムーンライト・スターズ」のメンバーだ。今年7月、自らの体を守り、エイズウイルス(HIV)感染を防止しようと活動を始めた。

 メンバーは、薄明かりが漏れる売春宿を巡回する。「感染予防にコンドームを」。配布しようと開けるコンドームの箱に暗闇から男たちの手が次々と伸び、瞬時に無くなっていく。参加したカトンゴレ・ジュリエッタさん(21)は「活動は、転機を迎える日に向けて、生きる自信につながっている」と話す。

 ウガンダは90年代、サハラ砂漠以南のアフリカでエイズ対策に最も成功した国だった。92年に人口の18・5%だった感染者は02年に6%に減少。鍵はHIV対策の基本である「禁欲、貞節、コンドーム利用」だった。

 しかし、今、長く減少傾向にあったHIV感染率は増加へと転じ始めた。ウガンダはブッシュ米大統領主導の「エイズ救済緊急計画」による支援を受け始めている。05年は年約1億4800万ドル(約160億円)にのぼった。予防活動向け資金の3割以上を禁欲教育に割くなど制約が課せられ、コンドーム利用は推進されていない。背景には、米宗教団体がブッシュ政権の支持母体になっている事情がある。

 国際家族計画連盟に加盟し、HIV対策に取り組むウガンダ家族計画協会のエリー・ムグムヤ代表(49)は「支援を得るには売春婦を対象にしない誓約が必要だ。感染者の65%以上が性欲の強い若者なのに、コンドームに積極的でないのは非現実的だ」と批判する。

 ウガンダ国家エイズ対策委員会の担当者は重い口を開いた。「計画からの援助はHIV関連予算の約85%を占める。国家財政を考えれば制約にノーとは言えない」

   ×  ×

 来月1日の世界エイズデーに合わせ、推定100万人のHIV感染者が暮らすウガンダから報告する。【カンパラで高尾具成】

毎日新聞 2007年11月29日 東京夕刊

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