妊娠9カ月となり産休に入ったのを機に、マイカー通勤から電車に乗ることが多くなった。そこで驚いたのが席を譲られないことである。もちろん譲ってくださる方はおり、高齢の方に譲っていただき、かえって恐縮することもあるのだが、何十回と乗車したうち譲られたのは数回であろうか。
優先座席前でも譲られたことはほとんどない。身動きできないような込んだ電車でもなく、明らかに妊婦体形なのに。体がつらくても口に出せず、他人の良心に期待してしまうのだが、こういう時は体のつらさより精神的なつらさに参ってしまう。
近所のスーパーではどの店員さんもレジでの会計後、かごを台まで運んでくれる。禁煙席でも喫煙席から一番遠い席に案内してくれるレストランもある。妊婦への心遣いをありがたく思うが、しょせん企業努力であり、個人の優しさは期待できないのだろうか。
ある産婦人科の先生がブログで、妊婦健診の待合室で、付き添う若くて元気そうなご主人が平然と椅子に座り、他の妊婦さんが立つ光景を目にするようになったと書かれていた。
核家族化による他人との関係の希薄化? 私に譲りにくい雰囲気がある? たまたま続いた偶然? いろいろ考えるがすっきりしない。私の考えが甘いと思い、最近は期待しないようにしているが、一縷(いちる)の望みを持っては裏切られる日々である。
毎日新聞 2007年12月1日 大阪朝刊