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少年院の場所や仮退院の時期など被害者に通知 1日から

2007年11月30日14時16分

 事件を起こして少年院に送られた少年の居場所や退院の時期などの情報を事件の被害者や遺族に知らせる制度が、12月1日から始まる。被害者や遺族の「加害少年の情報をなぜ隠すのか」「いつ退院するかわからないのは怖い」といった意見に応えた。一方で、少年の更生への悪影響や、プライバシーが適切に扱われるかどうかを懸念する声も消えていない。

 これまで加害少年に関する情報は非公開とされ、被害者側にも伏せられていた。97年に起きた神戸市の連続児童殺傷事件などで少年に関する情報が被害者側に伝えられたこともあるが、あくまで例外的な対応だった。

 被害者らの要望を受け、政府は05年に閣議決定した「犯罪被害者基本計画」に、情報提供を07年中に実現することを明示。法務省で具体化を検討してきた。

 新制度では、通知を希望する被害者や遺族が最寄りの少年鑑別所や保護観察所に申し出れば、どこの少年院に入所したのか▽少年院でどのような期間、どんな目標に基づいて教育を受けているのか▽いつごろ少年院を仮退院するのか▽いつ保護観察が終わるのか――といった情報を鑑別所を通じて受けることができる。すべての事件が対象だ。

 成人の加害者についても、12月1日からは、01年に始まった釈放時期の被害者への通知に加え、どこの刑務所でどのような指導を受けているかも伝えられるようになる。

 加害少年にかんする情報の提供は、少年事件の被害者や遺族が長年望んできたことだ。ただ、制度を適切に運用する態勢が整っているのかを懸念する声も強い。

 少年法に詳しい沢登俊雄・国学院大学名誉教授(刑事法)は「どの時期に、どこまで通知するべきかは事件ごとに現場で判断することになる。少年法の原則を守りながら、いかに被害者のためになる情報を通知できるかは運用にかかっている」と、現場の判断の重要性を指摘する。

 しかし、法務省が新制度を関係機関に通達したのは今月22日。導入間近になってからの通達に、現場の担当者の間では「細かい運用の決まりが定まっていない」「準備が間に合わない」といった戸惑いも広がっている。

 沢登さんも「被害者が守秘義務を破った場合はどうするのかなど、課題は多い。事前に担当機関や被害者との協議を徹底した上で発足させるべきだった」と指摘する。

 さらに、被害者や遺族に対しても新制度が十分に周知されていないという課題もある。96年に高校生の長男を他校の生徒に殺された「少年犯罪被害当事者の会」代表の武るり子さんは「待ちに待った制度だけに、被害者に十分に説明して理解を得た上で始めてほしい」と言っている。

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