サイエンス

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

iPS細胞:がん遺伝子使わず作成 安全面で前進--京大教授ら

 成人の皮膚細胞からさまざまな細胞に分化する能力を持つ万能幹細胞「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を作成した京都大の山中伸弥教授(45)らのチームが、当初必要とされたがん遺伝子を使わずに、高品質のiPS細胞を作ることに成功。応用に向けた安全面でのハードルを一つ越えた。1日付の英科学誌「ネイチャー・バイオテクノロジー」電子版に発表した。

 山中教授らは、四つの遺伝子をレトロウイルスに運ばせて体細胞に導入する手法で、昨年8月にマウス、今年11月に成人の皮膚細胞から、さまざまな臓器・組織の細胞に分化するiPS細胞を作成したと発表した。今回は、がん遺伝子(c-Myc)を除いた三つの遺伝子を導入してiPS細胞を作成することに、マウスとヒトそれぞれの皮膚細胞で成功。iPS細胞ができるまでの期間は従来の2~3週間より約1週間長いが、分化能力に遜色(そんしょく)はなかった。チームは「細胞がもともと持っているc-Mycが三つの遺伝子の導入により活性化し、細胞の初期化に働いたのではないか」とみている。

 iPS細胞をマウスの受精卵に入れて子宮に戻し、iPS細胞由来の細胞と受精卵由来の細胞が混じり合ったキメラマウスを誕生させ、約100日間育てた。その結果、c-Mycを導入したiPS細胞によるマウスは37匹中6匹が腫瘍(しゅよう)により死んだが、今回のマウスは26匹すべてで腫瘍ができなかった。

 遺伝子の導入にレトロウイルスを使うこと自体にも、がんを引き起こす危険性がある。山中教授は「臨床に一歩近付いたと言えるが、まだ課題は残っている。最終的にはレトロウイルスを使わない方法を確立したい」と話している。【須田桃子、鶴谷真】

毎日新聞 2007年12月1日 東京朝刊

検索:

サイエンス アーカイブ一覧

ニュースセレクトトップ

エンターテインメントトップ

ライフスタイルトップ

 

おすすめ情報