◎金沢創造都市会議 「逆ストロー」を共通理念に
金沢創造都市会議の基調スピーチで提示された「逆ストロー」の発想は、北陸新幹線の
開業を見据え、都市間競争にしのぎを削る石川、富山両県と沿線自治体が持っておきたい共通の理念である。
北陸新幹線のルートを「綱引き」の綱に例えるなら、北陸が力を合わせ、六対四ぐらい
で東京に「優勢勝ち」する姿を想像すると分かりやすい。現状のままでは、北陸新幹線がストローの役目をして、東京が北陸からヒト・モノ・カネを吸い取ってしまう。この強烈な「ストロー現象」に対抗し、逆転させるのは簡単ではないだろう。北陸が心を一つにして、わが町の魅力を高める施策を実践していかねばならない。
金沢創造都市会議では、その具体例として、ふるさと教育の推進や旧町名の復活、世界
遺産登録運動などが紹介された。金沢経済同友会から出されたこれらの提言は全国的にも注目を集め、着実に成果を上げている。都市の魅力を引き出す施策をスピード感を持って実行に移していく。そうした地道な努力の積み重ねが重要なのである。
同会議の全体テーマが「都市間競争」であったのは示唆に富んでいる。ストロー対策は
、金沢だけの課題ではなく、北陸全体が「逆ストロー」を合い言葉に取り組まねば失敗する。危機感を共有し、目の色を変えて競い合う空気が醸成できれば、しめたものだ。都市という点が線になって結ばれ、やがて「五百万人経済圏」という面へと広がっていくはずだ。
北陸のライバルには、東京や新潟といった強力な磁場を持つ都市が控えている。北陸新
幹線の開業で、そんな手ごわいライバルたちとの本格的な都市間競争が始まる。そのゴングは既に鳴っているのであり、二〇一四年度末とされる開業までに、勝負はあらかた付いてしまうことを覚悟せねばなるまい。
私たちの残された時間は、それほど多くはないのである。地域全体で立ち向かっていか
ないと、六分の勝利はおぼつかないだろう。北陸全体の浮沈をかけた戦いに、負けるわけにはいかない。特に金沢市や富山市、高岡市の責任は重大であり、し烈な競争の先頭に立って突き進む覚悟が求められる。
◎独立行政法人改革 聞こえぬ福田首相の決意
政府の「行政減量・効率化有識者会議」が廃止・民営化を求める独立行政法人(独法)
の公表を見送ったことは、政府の行革姿勢を疑わせ、大変心もとない印象を与えた。来週から閣僚折衝が本格化する独法改革に、不退転の決意で取り組むよう福田康夫首相に求めたい。これまでのところ、そうした強い改革意思が首相から伝わってこないのは残念である。
官僚の天下り先で、年間総額三兆円もの補助金が交付されている独法の統廃合や民営化
は、政府が取り組むべき行財政改革の柱である。安倍内閣時代の今年八月、現在百二ある独法について「真に不可欠なもの以外はすべて廃止する」という基本方針が閣議決定されている。
政府の有識者会議はこの方針に基づき、国土交通省所管の都市再生機構や農林水産省所
管の緑資源機構、文部科学省所管の教員研修センターなど計十一法人の廃止・民営化を政府の独法整理合理化計画に盛り込むこと求め、福田首相に報告した。それに合わせて、十一法人名を記した資料をいったん報道陣に配付しながら、同会議の茂木友三郎座長は渡辺喜美行革担当相と相談した上での判断として、直後に法人名の正式公表を拒否し、配付資料を急きょ回収するという迷走ぶりを見せた。
「具体名が先行すると省庁の反発を招き、今後の折衝の支障になる」というのが理由ら
しい。改革に及び腰と批判されても仕方のない対応であり、今後の独法改革の多難さを暗示しているようにも映る。
福田首相は渡辺行革相に対して「関係閣僚と十分に調整するように」と指示したが、省
庁側に独法整理の気持ちはほとんどない。廃止案の提示を求めた渡辺行革相への省庁の回答が実質「ゼロ」であったことからもそれは明らかであり、ただ調整を待つのではなく、先頭に立って蛮勇を振るう覚悟が首相にないと改革は進まないのではないか。首相官邸と官僚機構の融和ムードも指摘される現状では、整理合理化計画がそれこそ骨抜き状態にされるのではないかとの心配がぬぐえない。
民主党は独法の廃止、民営化を進める独自の法案を用意している。独法の整理合理化に
与野党が協力することも考えてもらいたい。